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加齢による副腎由来ホルモンの不均衡に着目した骨粗鬆症の病態解明と早期診断法の開発(第2回)

九州大学

Yoshihiro Ogawa

ここまでのご研究で、とくに大変だったことは何でしょうか。

コロナ禍の時期は大学での研究活動が制限され、実験や解析を進められなかったことが、やはり苦しかったです。その期間は、若手のスタッフが機械学習の習得に取り組んでくれました。その成果が新しいプロジェクトを進める上で役立ったことは嬉しかったです。

また、九州大学病院の泌尿器科の先生方と連携し、手術で切除した患者さんの検体を使わせていただくには、患者さんへの説明と同意を得ること、そして病態を把握して対応させることがとても重要です。研究者としてこの点はとくに大切にし、慎重に行っていきました。

若い研究者の育成にも、注力されているそうですね。

内分泌学に限りませんが、国内の医学研究者数は年々減少しています。私は60代になってからその危機感が強くなり、「次世代の研究者を育てなければ」と強く思っています。そのためには内分泌学の中でもどのような研究分野が良いだろうかと考え、副腎を選びました。

当初は人が集まらず苦労しましたが、今回の共同研究者である馬越真希助教(九州大学病院 内分泌代謝 糖尿病内科)を初め、多くの若手が熱心に取り組んでくれて研究が進みました。今はこの研究に興味を持ってくれる大学院生が増えて、研究助成の多くを解析に使うことができました。

副腎の研究は、国際的にも研究者人口は多くなく、新たな発見や優れた成果を出せる可能性が高く、副腎皮質ホルモンが生体の恒常性維持において重要な役割を担っているため、生活習慣病の病態解明や治療方法の開発にも繋げることができます。マウスやラットでの動物実験は困難ですが、だからこそ臨床を中心に進めることが可能であり、他の分野にはない面白さと、やりがいがある分野だと感じています。

共同研究者の馬越真希助教(左)。バイオインフォマティクス解析や、副腎由来ホルモンに基づく骨粗鬆症の早期診断モデルの確立を担っている

先生は平成27年に、異なる研究テーマで一般研究助成を受けておられました。

当時は慢性炎症やレプチン(脂肪組織から分泌されるホルモン)の研究が主でした。『「エピゲノム記憶」の概念の確立 ~生活習慣病の先制医療の実現に向けて~』という研究を、準備研究期間を含めて4年間支えていただきました。おかげさまで研究が大きく進み、たいへん感謝しております。

今回はまったく違うテーマで、2回目の応募でした。正直、難しいだろうと思っていたので、採択通知をいただいた時は、本当にうれしかったです。

新しい研究を立ち上げるときは多額のお金が必要になりますが、成果がいつ出るのかはわかりません。まさに賭けのような状態です。それでもセコム科学技術振興財団は、前回も今回も、そんな時期の研究を採択してくださいました。「きっとうまくいくから頑張ってみなさい」と背中を押していただけたようで、とても勇気をもらえましたし、その期待に応えられる成果を出さなければと、強い気持ちで取り組むことができました。

最後に、一般研究助成への応募を考えている方々へのメッセージをお願いします。

新しいことに挑戦しなければ、新しいものは生まれません。それは当たり前のことですが、成果が出るかどうかわからなければ、やはり二の足を踏んでしまうでしょう。

そのようなときは、このセコム財団の一般研究助成があることを思い出し、応募してください。4年間継続的に研究をサポートしてもらえるため、研究が大きく加速・拡大し、それまでとは異なる視点や考え方を得ることができるはずです。

助成研究を支えてくれた第三内科のメンバーたちと

動物実験が困難で、検体の収集も難しい副腎の研究を、次世代の育成と継承を含めて大きく進められたことに深く感動いたしました。副腎由来ホルモンに基づく骨折予測モデルが構築されて「50%の壁」が消失し、骨粗鬆症の早期発見と早期治療、予防が進むことを願っております。お忙しい中、長時間のインタビューにご協力いただき、ありがとうございました。

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