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健康長寿社会の実現に向けた新たな自己免疫制御療法の確立(第2回)

慶應義塾大学

Koji Hase

研究を進める中で、最も大変だったのはどんなことでしょうか。

この研究で構築したハイスループットスクリーニング系は、技術としてまだ一般化されていないため外注が難しく、とにかく多くのマンパワーが必要だったことです。最近はロボットとAIを組み合わせて、スクリーニングの作業時間を大幅に短縮する技術が存在しますが、対象がタンパク質や酵素ではなく細胞であるため、それらの活用もできませんでした。

ですが、十分な助成金をいただいたおかげで、調べたいと思っていたライブラリーを使って、スクリーニングを実施することができました。感謝しています。

一般研究助成に応募されたキッカケについて、教えて下さい。

この研究は基礎研究とはいえず、かといって何かの開発に直に貢献するものでもありません。科学研究費助成事業の対象にはならず、他の研究助成事業でも、応募するには萌芽的すぎる内容です。研究を始めた当時は慶應義塾大学に移って3年目くらいだったため、まだ大きな予算もなく、研究機材も揃っていませんでした。 

そんなふうに研究費について悩んでいたところ、岡山大学の鵜殿平一郎先生が、セコム科学技術振興財団の一般研究助成について教えてくれました。鵜殿先生は以前、この一般研究助成に採択されたことがあり、このような位置付けの研究でも申請できると勧めてくださったのです。

一般研究助成に採択されたおかげで、必要な機材や物品などを導入し、研究環境を整えることができた

先生のご研究は基礎研究から創薬へと繋ぐ、橋渡しの位置にあるのですね。

採択していただき、4年間にわたって助成してくださったおかげで、必要な機器の導入はもちろん、大量に使用するさまざまな試薬や培養液、細胞などの消耗品も、安定して確保できました。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による緊急事態宣言を受けて、放線菌培養抽出液のスクリーニング計画に多少の遅れが生じたときも、専任の技術員の雇用を認めていただいたおかげで、間に合わせることができました。

助成金の使途の幅が広く、自分が思い描いたチャレンジングな研究ができる、すばらしい助成制度です。この成果を生かし、最終目標である新たな自己免疫制御療法の確立を目指していきます。

基礎研究者として研究を行っている中で、偶然、特定の分子のみに作用する物質を見つけることがある。その発見を新薬開発に繋げることができれば、時間がかかっても社会貢献になると考えている

新薬開発までの長い道のりの中、大きくステップアップする足がかりになったのなら、嬉しく思います。自己免疫疾患の新たな治療戦略の確立、創薬イノベーションが実現するよう、心から祈っています。長時間のインタビューにお付き合いいただき、ありがとうございました。

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