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超高層建物のQ‐Δ共振リスクの解明と耐震設計法・制震改修法の開発(第1回)

慶應義塾大学

Masayuki Kohiyama

先生は理論の構築だけでなく、実験での検証も行っておられますね。実験では、どのような結果が得られましたか。

2方向で揺れの固有周期が異なる試験体を用意して、動台の上で振動を与える実験を行いました。

最初は並進と呼んでいる水平方向の揺れが目立つのですが、時間が経つと、次第にねじり振動が誘発される様子が実験でも確かめられています。

コロナ禍では、学校への入構や、研究室への入室にも制限があった。
動台を用いた実験は複数のメンバーで行うため、感染対策に配慮しながら研究を進めるのに苦労した

Q-Δ共振が、実際の建物で観測された例はありますか。

東日本大震災のときに、東京都第一本庁舎という2棟のタワーが載せられた建物において、ねじれを含む振動が記録されています。この振動は、Q-Δ効果が一つの原因ではないかと考え、モデルを作って現象の解明に取り組んでいるところです。

また、建築学会のデータベースには、実際の建物の地震記録などから調べた固有周期の情報が集められており、ねじり振動の固有周期のデータもあります。それらのデータを解析すると、ねじり振動の固有周期がわかっている建物のうち65パーセントはQ-Δ共振が起こる条件に近接していることがわかりました。

今まで余裕を持たせずに耐震設計をしていた建物は、思いもよらないQ-Δ共振が最後のひと押しになって被害を引き起こしてしまう可能性があります。現象をしっかり解明して、警鐘を鳴らすことが大切だと思っています。

住まいや建物の持つリスクは、適切な対策を行えば小さくすることができる。まずは、どんなリスクがあるのかを知ることが大切

対称な試験体がねじれて振動するという実験報告を目にした小檜山先生は、P–Δ効果のアナロジーからQ–Δ効果を着想され、精度の高い理論に改良されました。その結果、2方向が異なる固有振動数を持つ建物において、Q-Δ共振というねじりの共振現象が起こることを予測され、実験でこの現象を確かめられました。次回のインタビューでは、実際の振動実験で使用されている試験体や、開発しておられる制震装置について、詳しくお話を伺います。

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