この研究プロジェクトにおいては、実験システムの開発に苦労しました。蝶の周りの流れ場や渦について調べるための可視化装置が、計画段階で知らされていたほど性能が出ず、その後の改良がなかなか進まず、しかも著しく高価な装置が値上がりしてしまいました。そのため、急遽、性能の低い代替の装置を導入し、性能を向上する改修を施しながら研究を進めました。そのため、研究の進捗が遅れてしまったのが残念でした。
しかし、それを補うために音を用いた微細な渦の存在確認方法を思いついた訳ですから、人生万事塞翁が馬です。
京都大学
泉田 啓教授
Kei Senda
この研究プロジェクトにおいては、実験システムの開発に苦労しました。蝶の周りの流れ場や渦について調べるための可視化装置が、計画段階で知らされていたほど性能が出ず、その後の改良がなかなか進まず、しかも著しく高価な装置が値上がりしてしまいました。そのため、急遽、性能の低い代替の装置を導入し、性能を向上する改修を施しながら研究を進めました。そのため、研究の進捗が遅れてしまったのが残念でした。
しかし、それを補うために音を用いた微細な渦の存在確認方法を思いついた訳ですから、人生万事塞翁が馬です。
研究を始めた当初は、蝶が自ら発生した渦(環境)と翅(身体)との相互作用を利用して飛翔しているとは、考えていませんでした。様々な実験計測や数値シミュレーションを実施して、はじめて明らかになった次第です。
また、蝶の羽ばたき飛翔が制御-身体-環境のサブ・システムで構成されていることは、研究当初から考えていたのですが、サブ・システム間で生じる動的相互作用に関しては、まったく理解できていませんでした。蝶が渦と翅との相互作用を利用して飛翔していると理解するようになってから、サブ・システム間の相互作用が持つ本当の意味や重要性が次第にわかってきたように思います。
これまでのシミュレーションや実験によって、翅と翅脈・翅膜からの渦の発生については確認できました。しかし、翅の表面にある多数の鱗粉も何らかの重要な役割を果たしているのではないかと、共同研究者と議論をしています。これを受けて研究計画を見直し、ひじょうに微細な鱗粉が流れ場に及ぼす影響を観察し始めており、鱗粉が流れ場に及ぼす影響を詳細に調べたいと考えています。
これまでの研究で、蝶が自在に飛翔するメカニズムについては、かなり明らかになってきました。最終的には、シミュレーションや実験で得られた知見を整理して、込み入った環境内でも自在に飛翔可能な羽ばたき飛行機を目指します。また、将来的には羽音を出さずに防犯の視察に適した、羽ばたき型の超小型飛行機の実現に貢献したいと考えています。