法的推論の研究も続けていますが、今はまだコンピュータのスペックや、判断の元になるデータが足りません。それでも民事訴訟ロールプレイが実施された際の、相談から判決に至るまでの一連のプロセスのデータは10年分以上蓄積されているため、いつか裁判でも役に立つAIシステムが作れるようになると考えていますが、まずは「できることからやっていこう」と決めました。
法的推論の研究も続けていますが、今はまだコンピュータのスペックや、判断の元になるデータが足りません。それでも民事訴訟ロールプレイが実施された際の、相談から判決に至るまでの一連のプロセスのデータは10年分以上蓄積されているため、いつか裁判でも役に立つAIシステムが作れるようになると考えていますが、まずは「できることからやっていこう」と決めました。
国が定める法律は、法制度づくりの専門家が作成しています。しかし、自治体の条例づくりを担当している職員は、必ずしも法学の専門知識を習得しているわけではありません。
私はこの研究を始める前に、全国自治体の条例のデータベースを作るため、各地の役場に足を運び、条例作成の担当者に聞き取り調査を行いました。すると他の業務と兼任している職員がほとんどで「他の自治体の似たような条例を探し出して、それを元に“手探り”で作っている」という状態でした。
法令の条文には、一般的な文章とは異なる独自の言い回しや構造があるため、それを理解しないまま作成すると間違いが起きやすくなってしまいます。
そこで、条例の種別を選択し、個々の必要な情報を入力すれば、条例の条文が自動生成される法令作成ソフトウェアを開発しようと思いました。
まず、各法令の語彙情報や概念構造情報を分析・整理した「法情報ベース」を作成しました。次にPython(パイソン)というプログラミング言語を用いて「法令プログラム」として法令の内容を記述できる方式を考案し、その法令プログラムを通常の条文として出力する「法令コンパイラ」を開発しました。
たとえば地域住民の交流や活動の場として「○○ふれあいセンター」が建設され、施設運営について定めた条例を作成しなければならないとき、このシステムには「○○センター条例」に必要な項目がセットされたテンプレートがあります。施設の正規名称や住所、開館時間、休館日、会議室の利用申請方法などの具体的な情報を入力すれば、自動的に「○○ふれあいセンター条例」が作成される、というわけです。
さらに、作成した条例が意図を正しく反映しているかどうかの動作検証や、既存のICTシステムの法的監視を行ったり、法令間の関連性を確認することもできます。これにより、条例を施行した際の“予想外の綻び”を事前に発見できるなど、運用上の不安を大きく軽減することができます。