HOME > 研究者 > 林健司先生 > 分子を認識する二次元プラズモニックガスセンサアレイによる匂いの痕跡識別システム(第1回)

匂いの研究には、様々な困難が伴うのですね。そうした困難を克服するために、先生はどのようなアプローチ法をとられているのでしょうか?

匂い物質をその特性によって分類し、それぞれに対応したセンサを用意することで、匂いにアプローチしています。

匂い物質は、どのような基準で分類されているのですか?

匂いを嗅いだ時のマウスの嗅球の興奮パターンを、分類の基準に用いています。この分類法は、セコム科学技術振興財団の助成を受ける前に研究・開発したものです。

生物が匂いを嗅ぐと、匂い物質が、鼻の上皮の嗅細胞にある匂い受容体に吸着し、匂い受容体の興奮を引き起こします。どの匂い受容体が興奮したのかは、脳の前頭葉の下にある嗅球(嗅覚の第一次中枢)に伝えられ、嗅球の興奮を引き起こします。この嗅球の興奮パターンを示したのが、「匂いマップ」です。

どんな匂いを嗅いだのか、すなわちどんな特性を持つ匂い物質をキャッチしたのかによって、嗅球の興奮のパターンは異なりますが、大まかに分けると約40種類のパターンに分類できます。なお、類似する特性を持つ匂い物質は、嗅球において距離的に近い場所で興奮を引き起こし、匂いマップ上ではクラスタを形成します。

匂いの受容の仕組みと嗅球上の匂いマップの形成

この40のパターンを基準として、匂い物質を分類しています。この基準を使えば、匂い物質を分子の形や大きさ、疎水性・親水性、官能基の種類などの特性によって分けることができます。

匂いマップと匂い物質の特性:分子の形状やサイズ、疎水性・親水性などの特性、官能基の種類などの特性が似ている物質は、匂いマップ上でクラスタを形成する
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