HOME > 研究者 > 植野彰規 先生 > 見守りバイタルビッグデータ収集に資する非接触・無拘束型の敷布感知警報システム開発(第2回)

学生が主体的に参加し、システムの幅がどんどん広がったのですね。

はい。それと、一般研究助成の審査員の先生からも貴重なアドバイスをいただきました。

実は、私は2回目の応募でした。1回目は心電図のみの計測装置を想定していて、2次審査で落ちてしまったのですが、そのときに審査員の先生から「血圧測定にも力を入れるべきだ」とご指摘をいただきました。実際、医療・福祉現場で血圧は非常に重視されているので、今回の測定項目に入れて良かったと思っています。

また、別の先生からは「測定だけではなく治療も可能な、医療機器としての検討ができるはず」というお言葉をいただきました。バイタルの異常を検知したとき、ただちに電気刺激等による治療を開始できれば、もう一段階上の安全安心を実現できます。すぐには無理ですが、別の研究で検討を進めているところです。

そのようなアドバイスを得られたのは、実用化に向けてアナログ・デジタルともに、しっかりとシステムを作り込んでいたからだと思います。

この研究は現場での検証実験が不可欠ですが、受け入れてもらうためにはシステムの実用性を示す必要があります。そのためには、試作品を見てもらい、測定したバイタルデータの有用性を伝えることが一番です。しかし、デバイスの試作には500万円程度、Webシステムの試作には1,000万円程度の資金が必要になります。一般研究助成は助成金の使用用途の自由度が高く、たいへん助かりました。

第1回でもお話ししましたが、Webシステムを外注することができたのは、助成金のおかげです。研究者として、プロジェクトの最も重要な部分に注力できたことは、望外の喜びでした。

この数年で多くの論文を書き上げていらっしゃるのも、研究が花開いた証左ですね。

一般研究助成は4年もの長い研究期間があります。それは、研究の種を蒔いて結果を回収し、論文を書くために必要な時間です。研究内容によってその期間は異なると思いますが、私の場合は2〜3年前から、論文をたくさん出せるようになってきました。

申請を決意するだけでも、研究のビジョンを明確にする良い機会になります。審査に落ちても貴重なコメントをもらうことができますし、採択されれば4年間、大きな金額を投入して研究に邁進できるため、活用しない手はないと思います。

一般研究助成には、同じ東京電機大学の佐々木良一先生上野洋一郎先生が過去に採択されていたので、その事実に勇気をもらった。最近はシステムのセキュリティに関して、上野先生と一緒に研究を行っている

このシステムが1日もはやく医療・介護現場に導入され、ケアをする側とされる側の負担が軽くなり、より安全安心な日常がもたらされることを心から祈っています。長時間の取材にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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