HOME > 研究者 > 植野彰規 先生 > 見守りバイタルビッグデータ収集に資する非接触・無拘束型の敷布感知警報システム開発(第1回)

具体的にはどのように測定して、医療・看護・介護で情報を共有するのですか?

ベッドのシーツの下に電極センサシートを敷き、その上に対象者を着衣状態で寝かせるだけです。現時点では、電極センサシートの上部(胸側)と下部(腹側)の2カ所で脈動・呼吸・離在床・体動を、中段部1か所で心電図と筋電図をそれぞれ独立してセンシングし、中継サーバを介して施設内サーバへ送り、保存・蓄積します。更に、施設内サーバはこれらのデータを処理し、心拍数・呼吸数の算出と離床判定を行い、クラウドに送付します。クラウドでは医師、看護師、介護士の職種別に、トレンドグラフや警報の有無などを表示します。血圧相対値は心電図と脈動の数値をもとに推定しており、ゆくゆくはそのアルゴリズムを施設内サーバに組み入れたいと考えています。

ベッドに寝ているだけで、心電図、呼吸、脈動を連続的に計測できる。重ね着をしても1.5㎜程度の厚みなら、計測可能

モニタに表示されているグラフは、上から、心電図、脈動(心弾動)、臥床状態、呼吸運動です。  

脈動は、心臓の拍動に伴って背中が動いたときの信号を処理しています。電極が横長に伸びているため、姿勢が変わっても各信号を測定できます。

仰臥状態は、仰臥位から側臥位になると電圧の変化がグラフに表れて、寝返りを打ったことがわかります。身を起こすとさらに電圧値が高くなるため、ベッドから降りる前にフォローに入れば、転倒や骨折のリスクが軽減されます。

上から心電図、脈動、臥床情報、呼吸運動

血圧相対値の推定とは、どのように行うのですか。

心室の収縮のタイミングを表す心電図のR波発生から上背部の脈動が検出されるまでの時間差や、脈動の振幅、心拍数などに血圧に関わる情報が含まれており、これらの情報から血圧相対値を推定する計算式を構築した、とお考えください。

カフを装着して圧迫と弛緩を繰り返していると、血管がボロボロになってしまいます。また、就寝中に圧迫されて目が覚めてしまうという問題もあったため、カフを使わずに血圧を計測する方法を目指しました。

在宅介護では、看護師や介護士が異なる事業所から派遣されることがありますが、バイタルデータが常時クラウドに送信・保存されることで、ケアに関わる人々が同じ情報をリアルタイムで確認できる、ということですね。

はい。自宅で生活する要介護の高齢者の中に持病のある方が増えており、悪化や再入院の予防が重要になっています。たとえば入院中のデータを退院後の主治医や訪問看護師、介護士が共有できれば、患者の病態の変化をしっかり把握した上で退院後の在宅ケアに移行できます。さらに、在宅でも同じシステムを導入できれば、訪問していない時間帯のバイタルも把握できるため、より適切なケアが可能になります。再入院したときも、病院の主治医は在宅での病状変化を、具体的なデータで知ることができます。

もちろん医者、看護師、介護士、家族が把握すべき項目はそれぞれ異なるため、確認用のモニタ画面は職種に合わせてデザインしています。バイタルに異常が検出された際は、関係者の携帯端末やタブレットへ警告が送られる仕組みになっています。

(上)バイタルの異常を判断するアルゴリズムをクラウド内に実装し、関係者が持つ端末に警告が送信される仕組みを構築。(下)開発中のWebシステムの画面
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