HOME > 研究者 > 菅波孝祥先生 >「スマートインスリンデバイスによる革新的な糖尿病治療戦略の開発」(第2回)

現在はどのような実験を行っているのですか。

マウスやラット、さらに人間に近い体重を持つブタにマイクロニードル融合型デバイスを使用し、血糖値上昇に対する効果を確認しているところです。まだ確定には至っていませんが、使用前と使用後を比較したところ、血糖値の低下が確認されました。また、効果が1週間ほど持続することや、正常血糖値のブタに使用しても血糖値の低下が見られないなど、インスリン投与が適切にコントロールされていることを示すデータが集まりつつあります。

助成期間は残り1年弱。ブタに対する一定の効果を確定するため、全力で研究を進めている(写真は培養室と機器室)

実用化が待ち遠しいです。糖尿病患者の増加は日本だけの問題ではなく、世界的にも増えていると聞きました。

その通りです。発展途上国の栄養状態が以前より改善されたことは喜ばしいのですが、同時に、糖尿病の罹患率が高くなるという問題が発生しました。本デバイスは電気がない地域でも使用可能であり、皮膚に貼るだけの簡便な操作で持続的に効果を発揮し、さらに安価であるため、実用化できれば世界的に普及すると考えています。

実用化した際、どれくらいの期間でデバイスを交換することになるのでしょうか。

デバイスの使用期間について、医師、看護師、患者を対象にヒアリングを行ったところ「一週間で交換することが理想的」という回答を得ました。長期間貼り付けたままにすると、皮膚が炎症をおこす可能性があるため、週に1回、訪問看護などの際に取り替えるというスタイルが好ましいようです。

私は長ければ長いほど良いと考えていたため、この回答は意外でしたが、現場の声はとても説得力がありました。

このヒアリングは、継続審査の際に担当の先生からご指摘をいただき、実施したものです。効率化や安全性の向上など、あらゆる方面からリスクを潰すために日々、試行錯誤していたつもりでしたが、現場の視点を見逃していたことに気付き、深く反省しました。

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