実は、最初に選んだのは腎臓内科でした。他の内科のように外科と連携することはなく診断・治療を行い、最後は血液透析でケアをする。患者を一貫して診ることができるため、やりがいを感じたのです。
しかし、当時は腎臓病に効果的な薬がなく、病気が進行してしまった患者を診るというのが実情でした。腎臓病の多くは糖尿病によって引き起こされるため、糖尿病の段階で何とかしたいという思いが生まれ、東京医科歯科大学の小川佳宏先生のもとで10年ほど、糖尿病の治療に関する研究を行いました。
糖尿病は進行すると心筋梗塞や脳卒中につながる危険性があり、早期治療が求められる病気です。国内の患者数は現在約1000万人、さらに増加傾向にあり、国民医療費の30%を糖尿病および合併症が占めていることから、その克服は急務です。
しかし、インスリン療法は患者が自分で注射を打たなくてはならないことや、適切な量の投与が難しいなどの課題があります。今回は、そうした課題を解消する「スマートインスリンデバイス」の開発研究に挑む菅波孝祥先生に、お話を伺いました。
実は、最初に選んだのは腎臓内科でした。他の内科のように外科と連携することはなく診断・治療を行い、最後は血液透析でケアをする。患者を一貫して診ることができるため、やりがいを感じたのです。
しかし、当時は腎臓病に効果的な薬がなく、病気が進行してしまった患者を診るというのが実情でした。腎臓病の多くは糖尿病によって引き起こされるため、糖尿病の段階で何とかしたいという思いが生まれ、東京医科歯科大学の小川佳宏先生のもとで10年ほど、糖尿病の治療に関する研究を行いました。
食事をすると血液内にグルコースが増えて、一時的に血糖値が上がります。健康な人であれば、血糖値を下げるホルモン(インスリン)が膵臓で生成・分泌されて正常値に戻りますが、糖尿病の人はインスリンの量が少ない、または十分に働かずに、血糖値が上がったままになってしまいます。運動療法や食事療法、投薬による治療が行われますが、それでも改善しない場合は、本来体内で作られるインスリンを外部から人工的に投与します。
現在は注射による投与が主流です。1日3〜4回、患者さん自身が食後に行わなくてはなりません。ですが、食事の量や種類は毎回違います。本来インスリンの投与量は血糖値に応じて決まりますが、自分の血糖値がどれくらい上昇し、どれくらいのインスリンを投与するべきなのか、その時々の判断が、患者さんには難しいのです。
さらに、投与量が多すぎると低血糖症に陥り、命の危険に繋がることから、しばしばインスリンの投与量が不十分になります。治療をしているにも関わらず糖尿病が進行し、合併症を発症してしまうケースが多いのはこのためです。
この問題を解決するために開発したのが「スマートインスリンデバイス」です。上昇した血糖値を感知し、自動的に必要な量のインスリンを投与する装置です。