HOME > 研究者 > 小川佳宏先生 >「エピゲノム記憶」の概念の確立〜生活習慣病の先制医療の実現に向けて〜(第2回)

この研究の完遂には、膨大な時間が必要なのですね。

今はマウスで実験をしていますが、それでも妊娠・出産・成長の段階を観察しなければならないため、数年単位の時間がかかります。また、飼育やDNAメチル化解析にはコストがかかる一方、生物であるため不確定要素が多く、リスクが高い研究といえます。それでも、人が今よりも健康に生きていくためには、このような研究が必要であると確信しています。

途中で心が折れそうになったこともありましたが、セコム科学技術振興財団がこの研究の重要性を理解してくださり、長期間にわたり多額の助成金でサポートしてくださったおかげで、ここまで進めることができました。心から感謝しています。

最後に、今後の課題や展望をお聞かせください。

この研究は、私の研究生活では終わらせることができません。そのため、次の世代の研究者を育てること、バトンを渡す方法を考えることも、大事な課題のひとつです。

時間がかかり、因果関係の明示が困難であるため、焦って成果を出そうとすれば、間違った結論を正解と思い込む危険性があります。それでは意味がないため、慎重に研究を進め、正しい結論のみを導き出して次の世代に託すことが、自分の役目だと思っています。

短期間で成果を出すことができない研究でも、重要性を理解し、採択してもらったことに、勇気づけられた

「出生前後の環境因子」と「成人期に発症する疾患」の因果関係を証明する。数十年もかかる壮大な研究テーマに対し、次世代まで見据えて真摯に取り組まれる姿に、深い感銘を受けました。お忙しい中、長時間のインタビューにご協力いただき、ありがとうございました。

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