HOME > 研究者 > 西山正章先生 > ヒト型モデル動物を用いた自閉症の神経回路の同定と治療法開発への応用 (第2回)
ヒト型モデル動物を用いた自閉症の神経回路の同定と治療法開発への応用 (第2回)

金沢大学

Masaaki Nishiyama

研究をされるなかで、やりがいを感じられるのはどんなときですか。

二つあります。一つめはもちろん、新しい発見があったときです。知らなかったことがわかった瞬間は、何にも代えがたい、ものすごい喜びがあります。

もう一つは、研究成果を論文やメディアを介して世の中に発信したときの反響です。専門家だけでなく、患者さんのご家族からの反響もたくさんいただきます。その場合「うちの子の治療に使えますか」というご質問が多いのですが、私たちの研究はすぐに人の治療に応用できる段階ではありません。しかし、そういう現状をお知らせしつつ、近い将来に治療に応用できる時代が来るかもしれない、と説明させてもらっています。お話しをするなかで、自分の研究が患者さんに希望を与えていると感じられることも多くあり、研究の励みになっています。

近年、自閉症患者が増えて社会的な認識が高まるにつれて、発達障害に対して問題意識を持つ研究者や学生も増加傾向にあります。同じ志を持った仲間が集まり、課題解決のために協力し合うのも研究における喜びです。

自閉症の治療を実現するため、これまでに得たマウスの研究成果をヒトにつなげる方法を模索している。最近、ヒトのiPS細胞を培養して脳のオルガノイド(ミニチュア臓器)を作り、その神経活動の解析にも取り組んでいる

今後の目標を教えてください。

今回の研究成果を治療につなげ、自閉症を「治せる病気」にすることが一番の目標です。

一方で、研究成果を発信して自閉症に対する社会の認識を高めることも、私たち研究者の大切な使命だと思っています。現状ではまだ自閉症を治すことはできませんが、周囲の理解が深まり、患者を受け入れる環境が築ければ、患者や家族にとって過ごしやすい世界に近づきます。一研究者として、社会を変える力になりたいと常に思っています。

もう一つの目標は、「治せない病気を治す」という気概を持った、世界一流を目指す研究者の養成です。研究室の学生には、研究の企画から発表まで1人でできる独立した研究者になってほしいと期待しています。

今後は自閉症の研究と並行して、CHD8が関わるがんや老化の研究も積極的に展開したいと思っている。CHD8という同じ分子の役割なので、共通する部分もあるはず。CHD8という役者を中心に、広くさまざまな現象を解き明かしたい

一般研究助成に申請された経緯と、実際に研究助成を受けたご感想をお聞かせください。

他の大型研究費が終了する時期に新たな助成先を探していたところ、インターネットで公募情報を知りました。長期間にわたって手厚い助成が受けられる点に魅力を感じるとともに、「安全・安心な社会づくりに貢献する研究に助成する」という財団の理念にも強く共感しました。

助成期間中は事務的な負担も少なく、研究に集中できる環境をいただきました。4年間にわたって安定して研究費が提供されることで、経済的にも精神的にも支えられています。

新しい発見をするためには、新しい設備や技術を積極的に取り入れることが重要です。セコム科学技術振興財団は研究費の使用用途の自由度が高かったおかげで、幅広く研究を展開することができました。この助成によって得られた成果を社会に還元することで、感謝の気持ちを形にしたいと思っています。

最後に、これから一般研究助成に申請される研究者へのメッセージをお願いします。

どんな助成制度にもいえることですが、求められていることと自分が目指すところの接点が明確にできると、双方にとってプラスになると思います。私の場合、自閉症の治療法確立を目指すと同時に、患者さんにとって住みやすい社会に変えていくことも研究者の役割と思っており、「すべての子どもたちにとって安全・安心な社会を作る」という大きな目標が、一般研究助成のコンセプトと一致しました。いま申請を考えている方は、コンセプトをよく理解して、自身の研究目的や理念と共通する部分があれば、ぜひ応募してほしいと思います。

CHD8がもつ役割を理解し、その発現を制御することが可能になれば、発達障害の治療が広く実現する。それを信じ、夢を実現するために研究を続けている

自閉症患者さんの力になりたいという先生の熱い思いが、研究を力強くリードしていると感じました。CHD8を中心にした多岐にわたるご研究が、治療として実を結ぶ日を心待ちにしております。長時間のインタビューにご対応いただき、ありがとうございました。

Copyright(C) SECOM Science and Technology Foundation