HOME > 研究者 > 仁科博史先生 > 異常細胞排除機構を利用した先制医療法の開発(第2回)
異常細胞排除機構を利用した先制医療法の開発
(第2回)

東京科学大学

Hiroshi Nishina

先生は、どのような経緯で一般研究助成に応募されたのでしょうか。

本学には、平成24年度に一般研究助成に採択された清水重臣先生がいらっしゃいます。そのため、一般研究助成のことは以前から知っていました。清水先生からは「配慮のある、使いやすい研究助成である」と好意的な感想を聞いていました。セコムといえばセキュリティのイメージが強いにもかかわらず、審査員に生命科学や医学系の高名な先生方のお名前が並んでいることに驚きました。

しかし、先ほど述べたように、異常細胞排除の研究は始まったばかりです。実績が少ない領域を深掘りしていくことに対して、最初は「この研究を進めることに意味はあるのか?」という不安がありました。実際、さまざまな研究助成に応募する際に、研究の必要性を上手く明文化することができず、苦労しました。

だからこそ、一般研究助成に採択されたときは、このまま研究を続けて良い、続けるべきだと、強く背を押された気がして、とても嬉しかったです。

セコムと生命科学・医学の研究は、イメージが合致しない。そのため、若手研究者にも積極的に伝え、勧めている

採択されてから、研究の進め方や環境などに変化はありましたか。

分子機構を解明する手法は複数あり、人手やお金がかかります。助成金のおかげで、上記課題を解決することができました。専門業者に解析を依頼し、必要なデータ集めることができ、研究のスピードが上がりました。

また、当初計画と異なる場合、例えば「実験Aの結果を確認してから実験Bに取り組みたい」と相談させて頂いたときは、年度を跨いだ助成金の運用をご快諾くださいました。実験科学は結果に依存するので、柔軟な対応をして頂き、非常にありがたかったです。

他にも、実験動物の維持に必要な技術補佐員の雇用や、三児の母である助教を助ける技術補佐員の雇用、学生が計画以外の実験をするための試薬の購入など、人材育成に必要な環境を整えることができました。とても感謝しています。

異常細胞排除機構の研究は、今後どのように進んでいくのでしょうか。

私たちは肝臓に絞って研究していますが、皮膚にも、極性が崩れた細胞や老化した細胞を排除する機構があることが示唆されています。すなわち、多くの組織や臓器で異常細胞排除機構が存在していると予想しています。

我々の研究「肝臓の異常細胞排除機構を解明し、制御方法を開発する」が発展すれば、他の臓器への応用が検討され、異常細胞排除機構の研究が広がっていくと期待しています。

一般研究助成のおかげで肝臓の恒常性の研究が進展・発展した。新たに発見した「神経による肝臓の恒常性維持」現象についても研究を深めていきたい

肝臓の再生能力、異常細胞排除機構、そして老化の影響など、多様な側面から多くの発見がありました。異常細胞のみを排除する新たな治療法の誕生。その日を心待ちにしております。お忙しいなか長時間のインタビューにお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

先生の所属や肩書きは2024年10月1日当時のものです。
Copyright(C) SECOM Science and Technology Foundation