運動機能の疾患は、骨や筋肉のみならず、脳機能とも密接な関係があります。たとえば、マウスの「暗闇に隠れたがる習性」を利用し、次のような実験を行いました。
マウスを飼育するゲージに暗闇の部分を用意し、マウスがそこに行くと微弱な電流が流れる仕組みです。通常のマウスであれば、暗闇に入って電流が流れる経験をすることで危険を学習し、暗闇に入らなくなります。しかし、咀嚼機能の低下により、咀嚼筋の低下や顎骨のみ骨粗鬆症になったモデルのマウスは、暗闇に入ることを止めませんでした。このマウスの脳神経を調べたところ、神経のシナプスがほとんど消失していたのです。
まだ詳細な分子機構を研究中ですが、咀嚼機能の低下が、長期記憶や好奇心、不安といった脳の高次機能に影響を与えたのだと考えています。

咀嚼機能を低下させたマウスを用いた、明暗試験箱による探索・認知の実験と結果





本研究課題に主体的に関わっている小野岳人助教(左)と、林幹人助教(右)