マウスジェネティクス(病因解明のため特定の遺伝子を欠損させたり、強制的に発現させる遺伝子改変を行ったマウス)を用いた、生体レベルでの骨生物学です。骨は常に作り替えられていて、大人であれば数年で全身の骨が再構築されることを、ご存知でしょうか。これは私たちの骨の中に存在する、古くなった骨を壊す「破骨細胞」と、新たな骨を作る「骨芽細胞」の働きによるものです。
骨が作り替えられる再構築(骨リモデリング)のペースは、破骨細胞・骨芽細胞と繋がっている「骨細胞」によって指示されていると考えられています。骨細胞には、骨にかかる力学的な環境変化やホルモンなどの刺激を感知する働きがあり、その有無やその程度によって、リモデリングのペースを決定しています。この細胞間ネットワークが、骨の恒常性を制御しているのです。
近年、この骨破壊と骨新生のバランスの崩壊が、様々な骨疾患に繋がっていることがわかってきました。さらに、骨が産生する分子による、遠隔的な腎臓のミネラル代謝や肥満・糖代謝の制御、そして、食欲や脳機能への関与も近年見出されています。このため骨を構成する細胞の機能を研究し、骨の恒常性の維持機構と破綻のメカニズムを理解することで、骨疾患や全身性疾患に対する革新的な治療戦略を確立できると考えています。
