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ゲノム変動に対する経世代交代による生存適応の機構解析(第2回)

理化学研究所

Takashi Kondo

お話を伺って、遺伝子そのものは遺伝の一部をつかさどっているに過ぎず、その発現を制御している物理法則がたくさんあることが理解できました。

それぞれのタンパクは遺伝子によって作られ、実際の細かなパーツは遺伝子が動かしていますから、物理的な作用の大元になるのはやはり遺伝子です。ただ、遺伝子のはたらきが、いわゆる酵素のように単純なものではなくて、もっとダイナミックに大きな運動をさせるための仕掛けであるという点で、新たなレベルの話になると期待しています。

今回の助成研究を端緒として、新しい研究領域が大きく広がりそうな印象を受けました。前人未踏の分野を切り拓くには、今日まで多くのご苦労があったのではないですか。

近年のファンドは、特定の病気など明確な対象へのアプローチを求められることが多く、基礎研究を志す者にとっては厳しい状況です。ですから、セコム科学技術振興財団の助成を受けられることが決まったときは本当に嬉しかったです。

特に本研究は、遺伝学の常識であるメンデルの法則に合わない現象を追っているので、既存の概念に合致しにくく、同じ分野の研究者から理解を得ることさえ難しいこともあります。それでも、この分野に足を踏み入れたときから感じていた疑問や問題意識を追求してきたことが、今につながっています。

先生がいち早く染色体の高次構造の研究に着手されてからおよそ30年。最近ようやくこの分野の研究が盛んになってきたと感じている

長年この分野の研究を続けてこられて、これまで技術的な壁に阻まれていたことが、近年の技術の進歩によって可能になったという側面はありますか。

それは大いにあります。染色体の高次構造に関するアイディアのうちいくつかは大学院生の頃から温めていた構想なのですが、当時はテクニックがなくて実証できませんでした。

その後、ES細胞ができて、遺伝子のノックアウト、ひいてはゲノムデザインが可能になったことが、研究を進めるうえで大きな後押しになりました。解析の面でも、装置の進化を実感しています。最近の大きな進歩は、一本の染色体のなかの親和性の高い領域の解析が可能になったことです。このおかげで、染色体の折りたたみの規則性が証明できました。

自分が思い描いていた話へのアプローチが、ようやく現実になってきたと感じています。

最後に、これからセコム科学技術振興財団の研究助成に申請される研究者へのメッセージをお願いします。

非常に心の広い研究助成だと感じています。この研究を続ければ何かにつながると自分では思っているけれど、分かりやすく見据えられる未来はまだ存在しない。そんな基礎研究に対しても手厚く援助していただけるので、とても勇気づけられます。

これまで他のファンドに通らなかった研究でも、セコム科学技術振興財団の研究助成に応募するときには、思いきり自分の基本的なポリシーに従って、研究計画を立案して、チャレンジしていただくのがいいと思います。妥協せずに、自分のポリシーを突き詰めること。それが本当のイノベーションにつながると信じています。

検証したいことがたくさんある、と語る近藤先生。次々と生まれるアイディアのおかげで、今後の実験計画も盛りだくさん

染色体の高次構造がつかさどる遺伝のメカニズムが今後さらに解明され、遺伝子病の発症機構の解明と抑制へ発展することを祈っております。長時間のインタビューにご対応いただき、ありがとうございました。

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