HOME > 研究者 > 金倫基先生 > 食物アレルギーの抑制に関わる腸内細菌の探索とその創薬応用(第2回)
食物アレルギーの抑制に関わる腸内細菌の探索とその創薬応用(第2回)

慶應義塾大学

Yun-Gi Kim

先生のご研究は、他の疾患にも応用できそうですね。

多様な腸内細菌利用糖を使い分けることによって、その人の体質に合った腸内環境作りを行う。これを最終的なゴールとして、私は研究を行っています。 

今回のようなα-GIによる腸内細菌を介した抑制効果やその作用メカニズムなどの知見を蓄積していくことで、腸内細菌の持つ機能の全容が明らかになっていくと考えています。

例えば、肥満になりやすい体質の人や、花粉症の人に対して「この糖を摂取すれば、このような代謝物が増えて、症状を抑えることができます。そのための腸内環境を作りましょう」など、一人ひとりの体質に合った腸内環境作りは、健康維持や病気の治療に大いに貢献するはずです。

「それぞれの人に合わせた腸内環境を構築・提供して、健康的な社会を作る」ことが、研究の最終ゴール

今回のプロジェクトでたくさんの動物実験を行ったと思いますが、研究を続けていて一番ご苦労されたのは、どのような点でしょうか。

最終的に人への実用化や創薬をゴールとして考えていますので、動物の疾患モデルから現象を捉えてメカニズムを検証していく必要がありました。動物を使った検証実験は、1つひとつの可能性を検証しなければメカニズムに迫ることができないため、とても時間がかかるプロジェクトになります。今回、一般研究助成に採択され、4年間も助成金をいただいたおかげでここまでたどり着くことができ、大変感謝しています。

セコム科学技術振興財団の研究助成制度は、どのような経緯でお知りになったのでしょうか。

本学の長谷耕二先生から教えていただきました。2018年の10月に、私は長谷先生のラボから独立したのですが、独立にあたり研究資金が必要だったこともあり、申請に至った次第です。

今、30代、40代の国内の研究者は、ある程度、これまでの先行研究を超えた独自のアプローチでの研究ができるようになっていると思います。その一方で、大型の研究資金を国内で獲得することは、非常に難しい状況です。セコム科学技術振興財団の研究助成は、そういった方々にもじっくりと研究に取り組める環境を与えてくださるので、ぜひ応募していただけたらと思っています。

時間のかかるプロジェクトでも、助成制度のおかげでじっくり研究に取り組める。これから独立を目指す30代、40代の研究者たちにぜひ応募していただきたい

先生のご研究がアレルギー治療の創薬に結びつき、一人でも多くの命が救える社会へと繋がっていくことを願っています。長時間のインタビューにお答えいただき、誠にありがとうございました。

Copyright(C) SECOM Science and Technology Foundation