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亜鉛によるメタボとロコモの予防:亜鉛シグナルの理解による安心で安全な社会を目指して(第2回)

群馬大学

Yoshio Fujitani

本研究助成に申請されたきっかけについて、教えていただけますか。

この助成制度のことは、知り合いの先生から教えていただきました。その先生は、以前採択された小川佳宏先生の研究のことをご存知だったのです。さっそく制度内容を確認して応募しようと思い、キーワードである「安全・安心」に合致するよう、研究内容を検討しました。生活習慣病は広く人々の健康に寄与しますが、メタボだけでは足りないと思ったので、以前から共同研究を進めていた深田先生とも相談し、メタボとロコモの両方に関係がありそうな亜鉛トランスポーターZip13を標的にしました。つまり、この一般研究助成への申請を決めたからこそ、メタボとロコモのクロストークを標的にするという、他の研究者が手掛けていない独創的なテーマを構築できたのです。

最初は「セコムって、セキュリティ会社の?」と不思議に思ったが、調べてみると自分たちの研究でも採択されるかもしれないと感じ、申請することに

新たな研究テーマのキッカケになったこと、とても嬉しく思います。

面接も、アットホームな雰囲気で進んだという印象があります。面接では文化系の先生が多く、生命科学系の先生は少数でした。それでも採択されたということは、社会的にもこの研究が認められたのだと感じられて、とても嬉しかったです。準備研究から本格研究に移行する際の面談では、私があらかじめ予想していた質問をしていただき、しっかり答えることができたので、審査員の先生方がこの研究の本質を理解してくださっているという大きな手応えを感じました。

おかげさまで新しい共同研究もスタートしていますし、当初は想像していなかった結果や発見がありました。この助成期間中にすべてを解明することはできませんが、一定の成果は出せたと自負しています。

最後に、この一般研究助成を受けて良かったと思ったことを教えて下さい。

まず、若手研究者の研究が進んだことです。当研究室の福中彩子助教は、もともと亜鉛トランスポーターの研究に京都大学の大学院生時代から取り組んでいましたが、前回紹介させていただいた「ZnT8が肝臓でのインスリン分解を制御する」という私の研究に興味を持ってくれていました。その後、私の研究チームに参加してくれまして、研究室でZip13のベージュ脂肪細胞制御のプロジェクトを立ち上げて発展させ、本メタボ&ロコモプロジェクトの遂行にも、中心的な役割を果たしてくれています。セコム財団の助成金のおかげで、研究補助員を雇用できたり、新たな共同研究が組めたりと、研究が加速したことは間違いありません。最近では、彼女が提案した新プロジェクトが「生命金属科学」の新学術領域の公募研究に採択されています。このように若手研究者のキャリアアップにも、助成金は役立っています。

それから、他と比べて特に良い点は、助成期間が10月始まりであることです。他の研究助成制度はほとんどが年度末の3月で終了となるため、4月以降の研究費の見通しがない場合、とても不安になります。この一般研究助成で年度をまたいで使えるため、シームレスに研究が進められることが、本当に心強かったです。

助成金は、消耗品や会議費、動物管理費など、幅広く使わせていただきました。使用用途が広く柔軟であることも、研究者としてとても有難く、感謝しています。

ネームバリューに関係なく、研究内容のユニークさやオリジナリティなどを重視してくれる、研究者にとってメリットが多い助成制度だと実感している

ロコモとメタボを予防する新たな治療方法や新薬によって健康寿命が延び、より自分らしく生きられる安全・安心な社会生活が実現することを、心より願っています。長時間のインタビューにお応えいただき、誠にありがとうございました。

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