まずは、光ファイバーを用いたひずみ計測を成功させて、断層すべりの基本的なメカニズムをしっかり解明することが最初の目標です。
次のステップとして挑戦したいことはたくさんあります。一例を挙げると、プレートの沈み込みを、岩石試料の中に箱庭的に再現したいと思っています。プレートの固着しているところとそうでないところでは、摩擦の性質が異なると考えられています。そこで、試料どうしの接触面に摩擦の性質の異なるガウジを分布させたうえで、実際にすべらせてどのように力が抜けていくかを調べ、沈み込み帯で発生する地震のメカニズムの解明につなげたいと考えています。
また、試料への荷重とすべらせる距離や速さが大きくなると、摩擦熱の影響を考慮する必要が出てきます。将来的には、光ファイバーを埋める溝の中に温度を測るセンサーも埋め込むことで、2次元的な温度変化も捉えたいと考えています。
いずれにしろ岩石摩擦実験には摩耗がつきものであり、これから実験を重ねるうちに表面が粗くなったり、岩石の削れた粉が発生したりして、より複雑な現象が現れてくることが予想されます。そこにも新たな発見があるはずで、楽しみにしています。

超大型岩石摩擦試験機は、世界で誰も経験したことのない大きさ。あらゆることが初めてだったが、これまでの岩石摩擦実験で培った経験や技術を生かしながら、慎重に実験システムを構築していった
本研究の目標は、断層すべりがどのような推移をして次のステップにつながるかを実験で2次元的に解明し、断層すべり挙動の始まりから停止までを統一的に説明できるモデルを構築することです。
現在、海洋の観測網は非常に発達しており、断層における微小地震やプレスリップのような前兆が捉えられる可能性があります。最初の前兆が観測された時、次に何が起こりうるかを予測できるようになれば、効果的・効率的な地震対策につながり、被害軽減に貢献できると期待しています。
超大型岩石摩擦実験では、岩石試料の調達がボトルネックとなります。頭を悩ませていたとき、共同研究者からこちらの研究助成制度を教えてもらいました。ホームページで過去の助成研究を拝見すると、どの研究も極めてハイレベルで、かなりハードルが高いなというのが第一印象でした。一生懸命申請書を書きましたが、それでも採択されるのは難しいだろうと考えていたので、助成の決定は非常に嬉しい驚きでした。
その後、研究助成贈呈式に参加した際に、助成期間を終えられた先生方の研究成果報告を伺いました。どの研究も素晴らしく「我々も頑張らなければ」と改めて身の引き締まる思いがしました。
嬉しかったのは、選考委員を務めてくださった田中正人先生から、後日「ぜひ実験の様子を見たい」とご連絡をいただき、実験に立ち会っていただいたことです。選考審査で終わらず、研究の進捗に関心を持って足を運んでいただいたことに、とても勇気づけられました。
実用面では、助成開始が10月で年度の区切りと半年ずれている点がありがたかったです。多くの研究費は年度末に近づくにつれてまとまった金額が使えなくなっていくのですが、こちらの助成のおかげで年度の狭間にも研究をしっかり進めることができて、感謝しております。
一般的な研究助成では「社会の役に立つのか」「すぐに実装できるのか」などを問われることが多いと感じています。もちろん私自身、将来的な社会貢献を見据えて研究に取り組んでいますが、ゴールまでに何ステップもあるのも事実であり、すぐに成果が期待できるわけではありません。セコム科学技術振興財団は、そのような道のりの長い研究に対しても理解があり、研究の最初のステップを力強くサポートしていただきました。皆さんも、チャレンジングなテーマであってもどんどん応募していただくといいのではと思います。

南海トラフだけでなく世界各地で、地震がセグメントごとに発生したり、連鎖して起こったりすることが知られている。本研究によってその発生メカニズムが明らかにできれば、各地の減災に貢献する可能性がある