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南海トラフ巨大地震発生・推移予測シナリオ構築に向けた超大型岩石摩擦実験による断層摩擦すべり挙動の解明 (第2回)

防災科学技術研究所

Futoshi Yamashita

光ファイバーでひずみを測る仕組みを教えていただけますか。

光ファイバーの内部にレーザーで細い溝を掘り、特定の波長の光を反射する「回折格子」を部分的に作ります。その光ファイバーにいろいろな波長の光を入射すると、回折格子の間隔に比例する波長の光だけが反射されて戻ってきます。実験によって光ファイバーが伸び縮みすると、回折格子の間隔が変化します。すると、回折格子で反射する光の波長も変化します。反射光の波長の変化をモニタリングすることで、どれくらい伸縮したかがわかるという仕組みです。

光ファイバーを使うもう一つのメリットは、1本の光ファイバーに複数の異なる回折格子を埋め込むことができることです。本研究で使う光ファイバーは特注品で、場所ごとに異なる40種類の回折格子が埋め込まれており、40箇所のひずみ情報をモニタリングできます。光ファイバーを通って出てきた光には40箇所のひずみの情報が混ざっていますが、回折格子ごとに反射する波長領域が異なるので、観測点ごとの情報を区別できるのです。

通常ならば1個のセンサーに対して1本のセンサーケーブルが必要であるが、この研究で用いた光ファイバーであれば1本あたり40点の測定点が設置できる

画期的なひずみ計測に取り組まれているのですね。実際の大型岩石試料に光ファイバーを設置する位置は、どのように検討されましたか。

有限要素法を用いてコンピューター上でモデルに力をかけ、試料内のひずみの分布を予測しました。その結果をもとに8本の溝の配置を決定しました。1本の光ファイバーで40点ですから、合計で320点のひずみが計測できることになります。

自然界で断層面内部にかかる力を測ることは不可能ですし、実験でも断層面内の2次元的なすべり挙動の把握は例がなく、成功すれば世界初の事例になるはずです。かなりチャレンジングな構想ですが、計画は順調に進んでおり、研究チームでも期待が高まっています。

研究所に到着した新しい大型岩石試料。ツルツルに磨かれた表面には、一目では分からないほど細い溝が刻まれている

光ファイバーによるひずみ計測は断層の挙動を理解するための新しいアプローチとなりそうですね。ところで、スケールの観点から、超大型岩石摩擦実験と現実の地震との比較を教えていただけますか。

試験機には非常に大きな荷重をかけますが、実は圧力にすると4MPaで、地下百数十メートルの地圧に相当します。これだけの技術を持ってしても、地表のごく浅いところの地圧しか実現できないのです。また、実際の地震の際に断層が滑る速さはおよそ1m/秒ですが、この実験装置で実現できる水平方向の最大速度は1mm/秒ほど。実験で起こす地震のマグニチュードも-1程度と、規模には大きな差があります。

ただ、自然界で力の大きさを測るのは極めて困難であり、地震が始まるような10kmの深さにある力の計測はほぼ不可能です。それに対して実験ならば、力の配分変化も含めて計測可能であり、定量的な結論を導けることに大きな意義があります。

このように、どんな試験機にもメリットとデメリットがあります。本研究では大きな岩石で実験を行いましたが、小さな岩石を用いた実験が無駄というわけではありません。小さい岩石ならば、圧力や滑らせる速度を現実に近づけやすくなります。一方の超大型岩石では、摩擦面を大きくしたことで現れる現象を捉えることができます。地震に関するさまざまな現象や条件を明らかにしたうえで、それらを組み合わせてこそ、地震の本当の理解に進めると考えています。

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