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南海トラフ巨大地震発生・推移予測シナリオ構築に向けた超大型岩石摩擦実験による断層摩擦すべり挙動の解明 (第1回)

防災科学技術研究所

Futoshi Yamashita

岩石摩擦実験のなかでも、「超大型」の岩石試料を用いた実験に取り組まれたのはなぜですか。

これまでに岩石の摩擦実験は数多く行われていますが、そのほとんどは数cmスケールの岩石試料を使った実験です。しかし、巨大地震を起こす実際の断層は数100kmスケールであり、小さな岩石試料の実験から得られた情報をそのまま断層の挙動にあてはめられるのかは疑問です。また、小規模の摩擦実験では接触面も小さいため、時間とともにすべった領域が広がっていくような複雑な現象の再現は困難です。

私たち防災科研のチームでは、大型の岩石を用いた摩擦実験の重要性に着目し、15年ほど前から取り組んできました。第一世代の試験機では1.5m長、第二世代の試験機では4m長の岩石を用いました。実験を進めるうちに、大きさによって摩擦の特性が異なることや、石どうしの接触面で力の分布が不均質になると、より本物の地震に近い挙動を示すことなどが明らかになり、さらに大型の岩石を用いた実験が必要であることが分かってきました。

そこで2023年に、第三世代となる長さ6m、幅0.5mの断層面をもつ超大型岩石摩擦試験機を開発しました。確認できる限りでは世界最大の大きさです。現在は、この試験機を用いた実験研究を基礎として、さまざまな現象の解明を目指しています。

これほど大きな岩石を調達されるには、ご苦労があったのではないですか。

そうですね。使用しているのは変はんれい岩という岩石で、一般には黒御影石と呼ばれ、ビルの外壁や墓石として流通しているのですが、実験に使う大きさの岩石はもちろん特注になります。インドで採掘しており、石切り場に一回り大きな塊をオーダーして、それが日本に届いてから整形して、となると、入札から手元に届くまでに1年以上の時間がかかります。今回、本研究助成の予算で新しく岩石試料を購入させていただきましたが、長期にわたる購入手続きにもフレキシブルにご対応いただき、とても助かりました。

なお、国内でこのサイズの石を取り扱える石材会社は1社しかありません。かつ、この石材会社は、石の全面にわたって50μmの凹凸内に収めるという高度な整形技術を持っておられます。試料はただ大きければいいわけではなく、「6m×0.5mの面積の摩擦実験」であることを保証するために、ペアとなる岩石どうしの接触面が隙間なく合う必要があるのです。

さまざまある岩石のなかで、変はんれい岩を選ばれたのはなぜですか。

変はんれい岩は、海洋プレートの地殻部分を構成する岩石の一種です。変はんれい岩を使うメリットは、岩石を構成する鉱物の粒が緻密で、試料が壊れにくいことです。摩擦の性質は岩石によって異なりますが、必ずしもターゲットとする断層の岩石そのものを実験で使わなければいけないわけではありません。というのも、実際の断層において岩盤どうしが直に接していることはほぼなく、ほとんどの場合、「ガウジ」と呼ばれる粉砕された石の粉末が挟み込まれているのです。その摩擦の特性で断層の運動が決まるため、実験で断層の動きを再現して「どのような摩擦力がはたらけばどのような現象が起こるのか」を定量的に求めることが重要です。なお、将来的には岩石どうしの接触面に石を砕いて作った人工のガウジを挟んだ実験を行うことも検討しています。

どの岩石を使うかについては、かなりの検討を重ねてきた。鉱物の粒が大きいと欠けやすく、割れてしまうこともある。第一世代の試験機では大理石も使ってみたが、せっかく作った試料がわずか2回の実験で壊れてしまい、強度の大切さを痛感した
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