HOME > 研究者 > 山本真行先生 >複合型インフラサウンドセンサーの面的展開による津波防災情報伝達ネットワークの構築(第2回)

地域住民との連携が深まり、順調に進んでいるように見受けられますが、課題などはありますか。

「インフラサウンドの波源を人工的に作ることができない」ことが、この研究の最大の課題です。

センサーが捉えた波形がどのような自然現象に起因しているのか、インフラサウンドに関する論文やデータが少ないため、他のデータと照合しながら一つずつ特定していく必要がありました。2年間データを蓄積することで、台風や雷、豪雨などのインフラサウンドの判別は進みましたが、マグニチュード7〜9クラスの大津波に対する検証は、まだ一度もできていません。

大津波が発生すれば、痛ましい被害が出てしまいます。そのため現実に起きてほしくないという気持ちはありますが、本当の意味で検証できるのは、大津波が発生したときだけです。それが何年、何十年先なのかは誰にもわかりません。いつ、どこで発生するか分からないため、今後はインドネシアやフィリピン、ペルー、チリなど、海外にも観測点を設けていきたいと考えています。

低コストで導入・運用が実現できるため、多くの国で無理なく設置できそうです。

日本の海底設置型システムは設置に数百億円のコストがかかるため、どの国でも導入できるわけではありません。複合型インフラサウンドセンサーは約100万円で地上に設置でき、維持コストが低く、竜巻やゲリラ豪雨などの異常気象も検知できるため、発展途上国における減災にも貢献できると考えています。さらに、インフラサウンドセンサーの知名度の向上、防災分野における国際的なイニシアチブの獲得にも繋がると期待しています。

安芸市消防防災センターの倉庫に設置された、複合型インフラサウンドセンサー

それでは最後に、財団へのメッセージをお願いします。

センサーの開発と量産を前提とするこの研究は、ある程度の資金がなければ始めることができませんでした。金額の大きさや助成期間の長さ、助成金の使途がかなり自由であったことも非常に有り難く、研究を大きく後押ししていただき、感謝しています。

また、認知度が低い分野であるにも関わらず、一般の人々にも好意的に受け入れてもらえたのは「民間の組織に認められて助成金を受けている研究」であることが大いに影響していると思っています。お陰様で多くの人や組織と繋がることができ、インフラサウンドの新たな研究テーマも生まれました。流星の研究から津波防災システムにたどり着いたように、今後もあらゆる可能性に目を向け、人々の安全安心に寄与する研究を進めて参ります。

「1点集中型で尖った研究をするのではなく、ある程度のまとまった成果を持って隣接分野と繋がっていくスタイルで研究を続けてきた。だから流星から津波という、一見交わらない分野が繋がった」と語る山本先生

インフラサウンドセンサーの設置数が増えるとともに、この防災システムの知名度が高まり、いつか訪れる大きな災害への備えがより強固になることを願っています。長時間のインタビューにお答えいただき、誠にありがとうございました。

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