HOME > 研究者 > 山本真行先生 >複合型インフラサウンドセンサーの面的展開による津波防災情報伝達ネットワークの構築(第1回)

インフラサウンドを防災分野に応用しようと考えたのは、なぜですか。

南海トラフ地震が発生した際の被害想定では、高知県黒潮町に全国で最も高い津波が到達すると言われています。そのため高知県では、日頃から津波対策に関する話題が頻繁に出ます。津波はインフラサウンドを発するため、この技術が地域防災に役立つと思い、2008年ごろから防災を軸に研究を始めました。

インフラサウンドセンサーによる津波検知システムを構築するためには、沿岸部に複数の観測地点を設けなければなりません。通常は地域の方々に研究内容を理解していただき、同意を得るまで短くない時間を必要とするものですが、高知県の方々は津波防災の意識が高く、人と人の繋がりが濃密であったため、驚くほど早く各地域の自治体関係者や協力者の皆様と協力体制を構築することができました。

津波のインフラサウンドはどのように発生し、どうやって捉えるのですか。

海底を震源とする地震が起きるときは、海底が隆起もしくは沈下します。それに伴い海面も、100 kmスケールで隆起もしくは沈下し、津波が発生します。このとき、海面付近の大気に圧力が加えられ、振動が起き、インフラサウンドが発生します。津波は、インフラサウンドを発生させる「地球規模の巨大なスピーカー」なのです。

津波によるインフラサウンドの発生と伝搬

津波のインフラサウンドを捉えるため、現在、高知県内では黒潮町(4カ所)、足摺岬(3カ所)、宿毛市、室戸岬など、合計15カ所にセンサーを配置しています。その場所の多くは民家や倉庫で、一般的な電源とインターネット回線があれば、30分程度で設置が可能です。

この15カ所のセンサーは、図のように一定の間隔をおいて配置しています。これは「アレイ配置」といって、各センサーがインフラサウンドを感知した時間差から、津波の方角や距離が計算できるようになります。観測対象が巨大であるほど間隔が大きくなり、津波の場合は25〜30 kmの距離が必要です。本研究では2〜8 km間隔の小さなアレイも設けて、比較的狭い領域でのデータ収集も行っています。

高知県における面的配置は2017年12月に完了。北海道にも3点試験設置し、2018年には三重県や千葉県周辺にも拡充予定
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