雷に関心がある人は決して少ないわけではないのですが、気象予報という切り口での研究は、過去にもほぼありませんでした。気象学の分野では電磁気学の視点から雷を扱う研究は多くないですし、一方で、雷を扱う大気電気学の分野では、気象に関心を持つ研究者が少ないのです。雷という現象が学問の境界領域に当たっており、研究が進んでこなかったという背景があります。
それに加えて現在、日本の気象分野では台風や豪雨が注目を浴びています。一般向けの集会で研究の話をしても「雷よりも台風や線状降水帯を予想してください」と言われることが多いですし、研究者や気象の関係者と話をしていてさえ、「そんなに苦労して雷をやらなくてもいいんじゃない?」と言われてしまうこともあります。研究の意義を理解してほしいという気持ちは強いのですが、雷の研究はなかなか共感が得られにくいと感じています。そこが一番の苦労です。
雷の研究ができる助成制度で、かつ、若い世代を育てるための人件費が賄える規模のものを探していた時に、こちらの募集を見つけました。インタビュー記事を見て、かなり幅広い分野の研究を採択しておられることを知り、「これなら雷の研究でも可能性がある」と希望を感じたことをよく覚えています。
助成が決定した後の研究助成贈呈式で、財団の方が「メインストリームではない研究もちゃんと拾って、基礎研究として育てていくことは非常に重要だ」とおっしゃられたのを聞いて深く共感しましたし、この研究もその意図で認めていただいたのかなと思って、非常に嬉しく感じました。

今年の春に研究室を立ち上げ、助成金の一部を設備投資に活用した。使途が幅広く認められている点が非常に助かった。(写真はその際に購入したサーバーラック)
認知度の高くない分野の研究者は、現実として、自分の志した研究から「研究費が得やすい研究」へシフトせざるを得ない状況になることがあります。私自身、その可能性が常にありました。しかし、この一般研究助成をいただいている間は「雷の研究を続けてもいい」と安心して研究に没頭することができ、とても心強かったです。この助成金がなかったら、雷の研究を続けることが困難になっていたとさえ感じています。
おかげさまでシミュレーションの計算速度を上げることができましたし、雷の予報を提供することも実現しました。それに伴い、この数年で気象の研究者の間でも「雷の研究者」として認識していただけるようになってきました。雷の研究が対象になる助成制度がほとんどない中で、4年間しっかりサポートしていただき、雷研究の基礎を築く機会をいただけたことに、改めて感謝しています。
雷だけでなくさまざまな分野においても、新しいアイデアを持っているにもかかわらず、メインストリームでないために研究費が得られない研究者はたくさんいらっしゃると思います。そんな研究者にも光を当て、研究を世に出すための後押しをしてくださるのがセコム科学技術振興財団です。研究分野の認知度や規模に捉われない視点での助成は、日本の研究の総合力を維持するために欠かせません。ぜひ、今後も長く続けていただきたいと願っています。
最後になりましたが、この研究は私一人で進めたものではありません。共同研究者の方はもちろんのことですが、研究を一緒に進めてくれた研究室の学生、共同研究者の学生のみなさんの力なしではできませんでした。一緒に研究を進め、投稿論文や学会発表などの成果を創出した共同研究者、学生の方々に感謝を申し上げたいです。

一般企業に共同研究の声をかけると、即座に実装できる高い予測精度を求められることもある。そんな中で、基礎研究を大切にするセコム科学技術振興財団の姿勢は、地道な研究を続ける励みになった。今回得られた成果をもとに、さらなる飛躍を目指す