まず、世界的に見ても雲の中の電荷を測定した事例がないため、しっかりデータを取ることが第一歩です。次のステップとして、観測結果と現状の計算結果との比較により、計算結果がどのぐらい正しいかを知ることができます。もしそれらが一致しなければ、観測手法を再考したり、計算を精緻にしたりする作業が必要になります。観測数を増やすことが必要になるかもしれませんし、電荷を観測する他の手法を考える必要があるかもしれません。逆によく一致していれば、自信を持って計算を発展させていくこともできます。
気象の分野は、ありがたいことに気象庁や世界の気象機関がさまざまなデータを公開してくれているので、それらのデータを手に入れることは難しくありません。しかし、そもそも観測されていないデータは、研究者が自ら取りに行かなければ決して手に入りません。その意味では、今、研究の一番面白いところ、まさに醍醐味といえる部分に取り組んでいるとも言えます。今後、BOLTや電荷ゾンデによる観測と気象雷モデルの改良を並行して進めることで、新しい成果が得られるはずと期待しています。
観測データとの比較によって気象雷モデルを改良していくことで、雲の中の電場がより精緻に計算できるようになれば、航空機がそこを通ったときに被雷するか、しないのか。あるいは通らなくても近づいただけで落雷が起きるのか等、詳細な評価が可能になります。このような高精度の予報を目指して、今後さらに気象雷モデルを発展させていきたいと思っています。
また、本研究では航空機被雷にフォーカスしましたが、気象雷モデルはもちろん、自然雷の予測にも適用できます。実用化できれば、従来の経験的な判断に基づく雷注意報から一歩進んだ予報が可能になる可能性を持っています。一例を挙げると、野外イベント(例えば陸上大会など)の開催判断基準として活用してもらえる可能性があり、近い将来具体的な話を進めていきたいと考えているところです。
意外に思われるかもしれませんが、初めから雷に興味があったわけではありません。大学時代は物理学科で、レーザーを使った実験系の研究をしていました。暗室にこもって、鏡をいっぱい並べて、レーザーを用いた測定装置の組み立てを実施していました。振り返れば、ものを作ることは当時から好きだったと思います。それが今、シミュレーションコードの作成につながっていると思います。とはいえ、自分がシミュレーションモデルを開発する研究者になるとは想像もしていませんでした。
その後、物理学科で進学する道もあったのですが、それよりは実際に目に見えるものの研究をしたいと思い、大学院で気象分野の研究を始めました。当時のテーマは、大気汚染物質が雲に与える影響を独自のシミュレーションで解明することです。いざ始めてみたら、物理で学んだことが気象にも応用できました。かつ、気象を専門にする人が扱わない領域も「物理をやってきたから扱える」という手応えを感じました。雷はその最たる例で、誰も天気予報で雷を直接予測していないことに気づいたのです。それなら自分がやってみようと思ったのが、雷の研究を始めたきっかけです。

誰もが必要だと思っているけどできていないシミュレーションコードを作って、それが少しでも社会に役に立つなら嬉しい。一人の科学者として、何かを作っていたいという思いは常にある