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加振レーダによるRC部材の鉄筋可動性に着目した定量鉄筋腐食評価技術の革新(第2回)

群馬大学

Takashi Miwa

この一般研究助成を知ったきっかけについて、教えていただけますか。

セコム科学技術振興財団のホームページを拝見したことがあり、研究助成制度があることは知っていました。ですが金額が大きいことから、自分のような地方の国立大学の研究では無理だろうと諦めていました。

申請を決意したのは、令和2年度に同じ群馬大学の斎藤隆泰先生が採択されたことを知ったからです。研究の内容や将来性なども含めて、しっかりと審査してくださるのだと思い、挑戦しようと思いました。

ありがたいことに採択していただき、助成金だけでなく、継続審査では「こういう方向でやってみては?」等のアドバイスまで頂戴することができました。中には難しい内容もありましたが、実際にその方向で研究してみると良い成果が出ることが多く、研究がどんどん広がっていきました。

このご研究では、複合サイクル腐食試験機やX線CTなど、大型の機械が使われています。その購入にも助成金が役立ったのでしたね。

はい。とくに複合サイクル腐食試験機は、供試体をたくさん置けるように大型サイズにしてもらうなど、オーダーメイドで発注することができました。「塩水噴霧」「乾燥」「湿潤」を、それぞれ何時間、何回行うか。塩水の濃度や、乾燥・湿潤の温度と湿度設定など、細かい設定をした後は自動で動き続けます。実構造物に近い腐食生成物をいくつも生成でき、腐食メカニズムの解明を進めることができたのは、この機械のおかげです。

また、測定装置を改良するうえで市販のレーダ装置が必要になったときも、その購入費用に充てることができました。とても使いやすい助成金で、たいへん助かりました。

塩水は上部から噴霧し、乾燥は温風で行う。湿度を上げるときは蒸気を使う。水位センサもついているため、水が足りなくなったら自動的に給水される

一般研究助成を受けて今日までご研究を進めてこられた感想を、お聞かせください。

助成を受ける前と比べて、研究が飛躍的に進みました。以前の測定装置は「少し動かして、測って、また少し動かす」を繰り返すもので、現場で使用するには不向きでした。軽量化にも成功した現在の装置は、動かしながら連続的に測定できます。目指していた「誰でも使える装置」となりました。

また、その過程でさまざまな分野について学ぶ機会がありました。まだ基本的な知識のみですが、獲得した新しい視点は、今後の研究に大いに役立ってくれるはずです。

最後に、これから申請される研究者の方々へ、メッセージをお願いいたします。

私のように「地方の国立大学では無理かもしれない」と二の足を踏んでいる研究者は、多いのではないでしょうか。ですが、どうか審査員の先生方を信じて、臆することなく積極的に応募してください。研究が大きく進み、自分では気づかなかった視点が得られて、研究者としての幅もぐんと広がると思います。

現場に出て測定すると、予想外の鉄筋の構造に出会うこともあった。そのため、縦横に動かすだけで自動的に3次元イメージを生成するタイプなど、複数種類の装置を同時開発している

外から見るだけではわからない、コンクリート内の鉄筋の腐食状況。それを正しく把握する技術が社会に浸透することで、私たちの生活を支えるインフラ施設が今後も重大な事故を起こすことなく、安全に管理されることを願っています。お忙しいなか長時間のインタビューにお答えいただき、本当にありがとうございました。

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