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超高層建物のQ‐Δ共振リスクの解明と耐震設計法・制震改修法の開発(第2回)

慶應義塾大学

Masayuki Kohiyama

先生の研究室では制震装置も開発されていましたね。その仕組みについて教えていただけますか。

スイングするレールに振子をつけることで、一方向には振子が車輪で転がり、他方向にはブランコがスイングする形で、2方向の異なる周期の揺れを吸収できる装置の開発に取り組んでいます。

従来の同調質量ダンパーと呼ばれる制震装置は、建物の弱い方向の揺れだけを小さくする設計がなされていますが、私たちの開発している装置は、別々にチューニングして、x方向とy方向、どちらの揺れの吸収も可能にしているところが大きな特徴です。

研究室で開発中の制震装置。ある学生が、子ども用のルーピングのおもちゃを見て着想を得たという

それではさっそく、実験を見せていただけますか。

まずは、制震装置がないとどれくらい揺れるかをご覧ください。

加振波は白色雑音(ホワイトノイズ)という、短い周期から長い周期まで全部入っているランダムな揺れです。波形は綺麗なサインカーブではなくてランダムに波打っていて、実際の地震に近い形になっています。

制震装置がなければ、加振をやめた後も、建物の本体は長く揺れ続けています。

次に、制震装置をつけて、同じ白色雑音で揺らしてみます。

この場合は、振り子が激しく揺れて建物の揺れを吸収するため、本体の後揺れはほとんどありません。

制震装置を取り付けた試験体。振子の下には永久磁石がついていて、銅板との間に渦電流を発生させることで振動エネルギーを吸収している

制震装置がある場合とない場合で、建物の揺れが大きく変わることが分かりました。こちらの装置の実用化には、どのような課題があるのでしょうか。

実験では、振動の吸収は成功しています。ただ、これを実大スケールにすると、振子が小型バスくらいの大きさになってしまうのです。どう小型化するかが、実用化に向けた大きな課題です。

もう一つの困難は、レールの形状を変えられないという点です。スイングする方向の揺れの周期は、取り付け部分の長さを変えることによって調整できますが、レールは作った形に固定されてしまいます。実際の建物は、建ててみるまでどのような周期になるのか分からない不確定性があるため、制震装置の周期は調節できることが望ましいのです。その調節も、課題の一つになっています。

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