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複数回の長周期巨大地震動を受ける杭・超高層建築物の機能損傷メカニズムの解明(第2回)

東北大学

Yoshihiro Kimura

ご研究が現場に生かされ、建築物の安全向上につながることを願っております。なお、今後、どのような展開をご予定されているのでしょうか。

建築物の倒壊メカニズムはもちろん、地盤特性の変化やそれが及ぼす影響についても検証し、液状化現象が発生した場合、どの杭に崩壊の危険があり、どのような対処が必要なのかなどについて、現場の関係者に提案できるようにしたいと考えています。 

また、この研究を土台にして、建物全体で生じうる破壊について再現実験や数値解析を積み重ね、倒壊を引き起こす要素や崩壊の危険のある部位、また崩壊のパターンなどについて、検証したいと考えています。そして、建築物の倒壊に繋がりうる異常を検知し、被害を未然に防ぐことができるようなシステムの構築に貢献するのが目標です。

自分の知る限り、遠心載荷実験装置を用いた破壊実験は前例がない。慎重に取り組みすぎて、試験体が壊れなかったこともあった

最後に、一般研究助成に申請された経緯について教えてください。

所属している日本建築学会で、セコム科学技術振興財団や助成金のことを知りました。一般研究助成のように手厚い助成制度は自分の研究分野では珍しく、魅力的だったこともあり、以前から申請したいと考えていました。

ハードではあったものの、非常に勉強になったのは面接です。選考委員の先生方から、今まで考えたこともなかった事柄について尋ねられたり、自分が「常識」と思い込んでいたことを改めて考えさせられる場面もあり、大きな刺激になりました。

倍率が非常に高いこともあり、面接後も緊張と不安でいっぱいでした。採択通知が届いた時には本当に驚きましたし、嬉しかったです。

助成金は、超高層建築の縮小模型などの消耗品費や、数値解析用のサーバーやひずみ計測用の機器、遠心載荷実験の装置の利用料などに用いています。特に大型遠心載荷実験装置の利用料は高額なので、採択していただき大変に助かっています。助成金の使途に関しても、正確に報告する必要はありますが、あまり厳しいことを言われないので有難いです。

これから助成に応募する研究者へのメッセージをお願いします。

先ほど申し上げたように、面接ではこちらが予期しない質問をされることがあります。入念に準備して、自分がどのような研究を行うのか、しっかり説明できるようにしておいた方がよいと思います。

また、採択後の話になりますが、4年間の助成期間において、準備研究期間を大切にしてほしいと思います。自分の研究の展望や助成金をどのように研究に生かすかについて、真剣に考えることのできる貴重な1年間です。

各分野の一流の研究者が選考委員に名を連ねており、特に若手の研究者にとっては研究の「登竜門」とも言える助成制度です。高めのハードルですが、是非チャレンジしてほしいと思います。

準備研究から本格研究に移行する前の審査は、1年かけて取り組んだ研究について総括するチャンス。この研究助成にしかない優れた制度だったと感謝している

超高層建築物の倒壊メカニズムが明らかになることで、将来起こりうる地震被害を未然に防ぎ、安全・安心な社会の実現に繋がることを、心から願っております。お忙しいなか取材にご協力下さり、誠にありがとうございました。

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