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複数回の長周期巨大地震動を受ける杭・超高層建築物の機能損傷メカニズムの解明(第2回)

東北大学

Yoshihiro Kimura

ここまでの再現実験では、縮小模型や杭の一部のみを用いてきました。その実験結果を、実際の超高層建築物の倒壊にそのまま適用することは可能でしょうか。

おっしゃるように、これらの崩壊実験は比較的小規模なもので、超高層建築物の倒壊メカニズムを詳細に把握することは困難です。

そこで、実大スケール1/50の超高層建築物と杭、液状化地盤から成る模型を製作し、世界最大級の遠心載荷実験装置を用いて倒壊実験を行いました。これまでの実験よりもはるかに大型で杭の損傷プロセスを高精度に捉えることができることから、超高層建築物の倒壊を精緻に再現できます。

大型遠心載荷崩壊実験に用いた超高層建築物―杭・飽和地盤系の模型

準備実験では,入力地震動の大きさを適切に調整することで,杭頭部で局部座屈を生じて上部構造物・杭基礎が適切に崩壊するプロセスを再現できるかを確認しました。

とても大掛かりな実験だったのですね。実施に当たって、コロナ禍の影響はなかったのでしょうか。

この実験は、本研究の“集大成”として最終年度に実施したいと考えていたのですが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に伴い、他の実験を延期することになったので、前倒して実施しました。もちろん成果は得られたのですが、できれば3年間の研究で得られた経験や成果を生かして実施したいと考えていたので、その点は少し残念に感じています。

そういった悔しさはありますが、最先端の技術をうまく活用して、これだけの規模の実験に、世界で初めて取り組めたことに関しては、非常に嬉しく思っています。また、超高層建築物の倒壊メカニズムの一端を明らかにし、防災研究において道を切り開くことが出来たと自負しています。

コンピューターによる数値解析によって建築物の倒壊現象を精査しているが、倒壊メカニズムを精緻に明らかにするためには、再現実験が必須である

高層建築物の安全性確保の一歩となる、素晴らしい成果だと思います。それでは、これまでのご研究で最も苦労されたことについて教えてください。

遠心載荷実験では、試験体に遠心力や地震動を加えながら、杭の崩壊や建築物の倒壊を再現したのですが、崩壊過程の再現には苦労しました。試験体が全く壊れないのは論外なのですが、加振しすぎて試験体がバラバラになってしまうと、どこがどのように破壊されるのか正確に把握できませんし、通常の40倍の重力が働いているので、装置がダメージを受けたり、実験参加者に危険が及ぶおそれがあります。

また、複数回の地震動が及ぼす影響について検討する場合には、2回目以降の加震で試験体が壊れるように、地震動や杭のサイズを調整するなど、工夫を重ねました。

さらに、建築物の倒壊を精緻に再現し、現実に適用できるようにするためには、試験体の精度を向上する必要があります。そのため、当研究で用いた試験体は機械切削によって製作し、精密さを追求しました。

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