超高層建築物が日本で最初に建てられてからおよそ半世紀が経過していますが、東日本大震災以前は長周期地震動が少なかったこともあり、それが建築物に及ぼす影響についてはほとんど考慮されてきませんでした。したがって、先にご説明した共振現象や、それが杭に及ぼす影響についても、十分に予測されていません。
また、先ほどご説明したように、複数回の地震動が発生した場合、地盤特性の変化によって杭や建築物の振動の性質が変化しますが、それについての研究もなされてきませんでした。

東北大学
木村 祥裕教授
Yoshihiro Kimura
超高層建築物が日本で最初に建てられてからおよそ半世紀が経過していますが、東日本大震災以前は長周期地震動が少なかったこともあり、それが建築物に及ぼす影響についてはほとんど考慮されてきませんでした。したがって、先にご説明した共振現象や、それが杭に及ぼす影響についても、十分に予測されていません。
また、先ほどご説明したように、複数回の地震動が発生した場合、地盤特性の変化によって杭や建築物の振動の性質が変化しますが、それについての研究もなされてきませんでした。
はい。特に杭に関しては、地上から見えないので確認が困難です。また、損傷が生じた場合でも、地震後に液状化が収まり、地盤の水平剛性(水平方向に働く力に抵抗する性質)が回復すると、見かけ上は鉛直支持力を保持することができます。そのため、地震後に損傷の可能性がある杭を特定することが難しいのです。
本研究に取り組む前、私達の研究グループは液状化によって軟弱化した地盤において鋼管杭が座屈し、建築物が倒壊するまでのプロセスを縮小模型実験により再現し、さらにそのメカニズムを理論的に解明しました。これは世界で初めての取り組みです。
しかし、これまでの研究は主に1 回の強震動によって建築物や杭が崩壊するケースを対象としており、複数回・長周期巨大地震動による地盤特性の変化が、建築物や杭の振動特性、崩壊メカニズムに及ぼす影響について検討することはできていませんでした。
そのため本研究では、南海トラフ地震を想定し、複数回の長周期巨大地震動を受ける超高層建築物の倒壊メカニズムや、それに影響を及ぼす要因の解明を目指しました。これが実現できれば、崩壊のおそれのある部材を高精度で予測できるようになり、建築物の安全を守ることが可能になります。