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幅広いステークホルダーの防災リテラシー向上を目指す「防災・減災教育ハブ」の構築(第2回)

兵庫県立大学

Reo Kimura

「教えたい人」と「学びたい人」とをつなぐ、指導案ジェネレーター。教育を提供する側にとって心強いツールですね。指導案ジェネレーターを開発するうえで工夫されたのはどんなところでしょうか。

指導案は、大きくわけると「学習目標」と「進め方」で構成されています。たとえば、ある大雨災害に関する指導案では「大雨災害の特徴と被害、影響を知る。大雨に関する情報取集の仕方、対応行動のあり方を知る」という二つの学習目標を掲げています。それらの目標を達成するための進行案、いわゆる台本が「進め方」です。

教育者がプログラムの核ともいえる「学習目標」さえ理解していれば、「進め方」は自由です。私たちの提案する指導案の「進め方」は、教育の専門家でなくても使いやすいように一つひとつのセリフまで書いているのが特徴ですが、一字一句その通りに進める必要はありません。教育者が自分の地域や対象のレベルに合わせた指導案にアレンジしやすいように、ワードやパワーポイントなど一般の人にも扱いやすいソフトでフォーマットを作成しています。

また、防災教育はグループワークで進めることが多いのです。「グループワークをどう進めて良いか分からない」という声に応えるために、「グループワークのトリセツ」という本を出版しました。

木村先生が出版された「グループワークのトリセツ」には、グループワークをスムーズに進めるためのノウハウが詰まっている

教える人・伝える人の立場に立った試みをされているのですね。現在の日本の防災教育についてお考えのことや、今後の防災教育に対しての提案があればお聞かせください。

全国一律の教育を行えばよいわけではない、というのが防災教育の難しさです。海辺の学校と山間部の学校では、起こる災害も違います。また木造家屋が密集している地域、住民が流動的で交流が少ない地域、高齢者ばかりの過疎地など、地域によっても備えのあり方が違ってきます。もちろん児童生徒の人数など、学校の規模によっても教育は異なるでしょう。これらが、義務教育における防災教育が進まないことの一因でもあります。

研究助成を受けるにあたり、審査員の先生方からいただいた「単にハブサイトというシステム開発をするのではなく、防災教育コンテンツの体系化や開発を行う必要がある」というアドバイスに応えるためにも、まず防災教育の現状を理解することが必要と考えました。そこで防災教育教材の指導案に着目し、全国から2,000件以上の指導案を集めて分析を行いました。その結果、防災教育教材は、その目的によって「災害を知る」「災害に備える」「災害に対して行動する」という3つのグループに大きく分類されること、そして、その3つの中にもさらに細かい教育目的があり、合計で8つの小さなグループに分けられることがわかりました。これらの成果は、論文「全国で展開される防災教育教材の現状分析~学習指導要領との関係性を踏まえた今後の防災教育のあり方~」にまとめて発表しました。

今後はこの3つ、あるいは8つの枠組みで体系化した防災教育プログラムを提案していきたいと考えています。

全国で使用されている防災教育教材の指導案の分類とその解釈。膨大な量の教材を体系化することで、今後の防災教育プログラム開発における方向性が見えてきた
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