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幅広いステークホルダーの防災リテラシー向上を目指す「防災・減災教育ハブ」の構築(第1回)

兵庫県立大学

Reo Kimura

防災リテラシーを底上げするために、ご研究が始まったのですね。このサイトの特徴や活用方法について教えてください。

防災リテラシーハブ「Literacy HUB」は、時間と空間の制約が少ないインターネットサイト上で防災の知識や知恵を共有することで、幅広いステークホルダーの防災リテラシー向上を目指しています。防災・減災に役立つ知識から、実際の体験談や防災クイズまで、扱うコンテンツは多岐に渡り、その数は現在6,600件を超えています。

すべての記事を新しく作るわけではなく、すでにある有用なコンテンツも材料としています。たとえば、既存の防災サイトと相互リンクを貼ったり、防災技術やグッズを開発している企業と連携したりしています。
また、防災教育プログラムを開発してサイト上で共有することも、この研究の大きな柱になっています。

サイトの利用者は、キーワード検索によって自分に関心のある記事を抽出することができます。また、「よく読まれている記事」「クリップ数の多い記事」を自動的に紹介するプッシュ機能を導入して、何から始めたらよいのかわからない人への提案となる発信を心がけています。

防災リテラシーハブのトップ画面。利用者が必要な情報にアクセスできるように様々な工夫がしてある

幅広いコンテンツを集めて、防災教育を体系化したハブサイトを構築しておられるのですね。これほど様々なステークホルダーから協力を得るには、かなりのご苦労があったと思います。

ありがたいことに、周囲の理解を得るために苦労した記憶は、あまりありません。「防災教育に取り組みたいけれどやり方が分からない、いい資料がない」とモヤモヤしている人との出会いや、相談を受ける機会がたくさんありました。防災意識が高い人の需要が私たちの取り組みとマッチして、いろいろな相談に応えていくうちに現在に至ったという感覚です。

特に、内閣府が主催する「防災教育チャレンジプラン」という取り組みがあり、その実行委員を務めていることで、出会いが広がっています。これは、防災教育を推進するためのプランを全国から募る取り組みです。チャレンジプランに採択されると、プラン実行のための資金援助と、実行委員をはじめとするアドバイザーからの助言を受けることができます。これまで、自治会の集まりや大学のサークル、小中高等学校、特別支援学校など、さまざまな規模の団体のチャレンジプランにアドバイザーとして携わってきたため、新しい繋がりが生まれてきました。

心理学に軸足を置きつつ、学際的に防災に取り組んでこられた木村先生だからこそ、有機的なつながりのあるハブサイトが実現したのですね。このハブサイトは長期的な運営を考えておられるのですか。

はい。ハブサイトというシステムを構築するだけでなく、研究期間終了後もこのサイトがPDCAサイクルで進化を続けながら継続的に活用されることに意義があると考えています。学校、企業、地域、自治体等の関係者など、防災・減災に関する幅広いステークホルダーを対象に、コンテンツの再検討や教育プログラムの実証実験を行い、使用者からのフィードバックを糧に成長を続けられる状況をつくっています。

防災リテラシーハブが進化を続けながら長期的に利活用される状況を実現するため、幅広いステークホルダーとの協力体制を整えている
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