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アンジュレータ型潮流発電機の開発(第2回)

東京海洋大学

Tetsuya Ida

海洋開発の今後については、どのように考えておられますか。

現状、海洋開発がなかなか進まないのは、技術的なハードルが非常に高いことも一因です。回転型潮流発電機を例に挙げると、直径が10m以上あるタービンの上端と下端では水圧がだいぶ違うため、水密構造に工夫が必要になります。こういったところを一つ取っても設計は大変です。

しかしより根本的な課題は、単分野でのアプローチが多く、多面的なアプローチが乏しいことです。「海が好き」という思いだけでは、開発は進みません。

私の場合、自分の専門分野は電子工学で、現在の研究室のテーマである海洋開発とは完全には一致しませんが、それがかえってメリットになっています。多角的にものを見られますし、電子工学の知識や技術を利用して、海洋開発に足りていない部分を補うことができます。複合的な研究スタンスが、うちの研究室の強みです。

これは海洋開発の分野だけの話ではないと思います。現在、社会が非常に複雑化しているので、専門家は一つの専門分野だけではなくて複合的な知識を持つこと、あるいは複数の分野の研究者や技術者が協力することで新天地が拓けると考えています。

学生には、機械図面の引き方から指導する。自分の手を動かすことで、実験条件の設定のしかたや、何の目的でどんな道具を作るかが理解でき、学びが深まる

分野をまたぐ研究は、まさにセコム科学技術振興財団が重視しているところです。一般研究助成を受けられた感想をお聞かせ願えますか。

今までいただいた研究助成金の中でも、非常に使いやすいものでした。一般的な助成制度と時期が半年ずれていてつながりが良い点、年度ごとに予算を使い切らなくてもよい点が助かりました。特殊な物品は注文してもすぐ届かない場合が多く、特にここ数年はコロナ禍の影響で納品が遅れがちなのです。

本プロジェクトを開始した初年度は「準備期間」として、まさにスタートから手厚くサポートしていただきました。アンジュレータ型潮流発電の研究は助成期間が終わっても続けますし、最終的な実用化に至るまでにはおそらく10年近い時間的スケールになると思っています。助成をいただいたおかげで、今後につながる確かな土台を作れたことに感謝しています。

最後に、これからセコム科学技術振興財団の研究助成への応募を目指しておられる方へ、メッセージをお願いします。

「将来何に役立つか?」という、ゴールを見据えた研究テーマを設定することが大切だと思います。誰にでも学術的興味はあるものですが、個人的な興味だけを追求していては、研究の社会的な意義が失われてしまいます。特に工学の分野であれば、何かに役立てるための研究を志すのが理想ではないでしょうか。「できる・できない」がまだ先の話であっても、「こういう方向に将来性がある」という夢を持たせられるテーマを選ぶこと。これは私自身の研究における信条でもあります。

地域特有のニーズに気づいたことから始まった、潮流発電機の開発。その実用化は、日本における再生可能エネルギーの利用を大きく促進し、エネルギー自給率の向上にも寄与することが期待される

近い将来、アンジュレータ型潮流発電が実用化され、全国の海域で活用されることを祈っております。長時間のインタビューにご対応いただきまして、ありがとうございました。

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