私は学生時代からインターネットの可能性に魅せられていたため、大学の研究室では世界中のコンピュータで分散処理を実行できる言語処理系を作りたいと思い、プロトタイプを構築しました。その後、産業技術総合研究所の所属となり、分散コンピューティングの研究に携わることになりました。分散コンピューティングの代表例SETI@homeは、宇宙から地球に届く膨大な電波の中に、宇宙人が作った人為的なデータが含まれていないかを検証するため、多くの人々からコンピュータの計算能力を提供してもらう、というものでした。
ですがそれでは、私たちは常に、サーバに対して「計算してあげる」側にしか立てません。それが残念だったので、誰もが「計算してもらう側」と「計算してあげる側」を自由に行き来できるようなシステムの研究を進めました。
分散システムに限らず、私は、すべての人々が対等な関係になり、一人ひとりの自律的な行動によって全体が上手くいくような、ボトムアップ型の社会が理想的だと考えています。