そうですね。ただ、将来的にすべての観測をUAVで賄うつもりはありません。
最近、もう一つの新しいプラットフォームとして、無人ボートの開発を進めています。どんな観測手段にも長所と短所がありますから、1つに絞るのではなく複数のプラットフォームで観測を担うのが理想と考えています。
UAVの最大の強みは速度です。80km/hで飛べるので、他の手段に比べて圧倒的に速く、短時間で目的地に到達できます。ただ、飛行中や離着水の際の故障リスクは避けられません。一方で、無人ボートは現状10km/h出るか出ないかですが、軽量化の必要がないので強度を高めることができます。
本研究で開発したUAV内部の技術はそのままボートにも転用できるため、これまでの成果が大いに役立つと期待しています。

地殻変動をしっかり把握するためには、観測基準点は現状の倍は欲しいところ。無人機を利用して観測をコストダウンできれば、基準点の増加につながると期待している
海洋での観測において留意しなければならないのが、海流です。
海上保安庁の設置した観測基準点は、南海トラフの海域に集中しています。この海域を北上している黒潮は、最大3〜4ノット(6〜7km/h)のスピードを持っており、それより速い無人機でなければ黒潮に流されてしまいます。したがって、高速のUAVによる観測が適しています。
残りの基準点は、東北沖にある日本海溝に沿って設置されています。この海域は海流の影響が少ないため、ボートでの定期観測が向いています。それに加えて、地震発生時など突発的にデータが必要になった時に、UAVを送り込むスタイルが効率的と考えています。