東京大学大学院情報理工学系研究科 博士課程修了 博士(情報理工学)
産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門 特任研究員
東京大学大学院情報理工学系研究科 特任助教
筑波技術大学保健科学部 情報システム学科 客員研究員
東京大学高齢社会総合研究機構 特任助教
産業技術総合研究所 人間情報研究部門 研究員
同研究所 人間拡張研究センター 研究員
私の研究の目的は、障害をお持ちの方のコミュニケーションの難しさや生きづらさを、最新のシステムを用いてサポートすることです。しかし、なかには簡単に解決できない状況もあり、その場合は人手を使って解決するしかありません。ですので、ボランティアの方々が障害をお持ちの方を支援するスキーム自体を見直したり、もしくはそのような意識のある人達を何かしらの形でマッチングしたりできないか、と考えていました。
また、マッチングするにしても、互いにスケジュールが合わなかったり、場所が離れていたりする場合があります。そこで、モバイル端末などの最新の情報機器によってデータを収集し、データを介して障害をお持ちの方を支援することができれば、ボランティアのハードルが下がり、支援の形が広がるのではないかと考えました。
現在のバリアフリー状況に関する情報は、局所的・断片的なものが点在し、ひとつの情報基盤に集約されていないため、結局のところ役に立たないという状態になっています。
では、そのような情報をできるだけ多く集め、社会的に有益な財産として共有していくためには、どうすればよいのでしょうか。地域の情報は、その地域に住んでいる人が一番よく知っています。そこで、まずはその地域の人同士がうまく繋がり、刻一刻と変化するバリアフリー状況の共有・更新がしやすい、ユーザビリティを高めた地域情報共有システムの開発に取り組みました。
既存の先行研究としては、四肢不自由者を対象とした「多目的トイレマップ」や、NPO法人の「ことナビ」など、視覚障害者を対象にしたウェブ上の情報基盤があります。また、VR技術を用いて遠隔地を閲覧することで地域の情報を収集したり、Googleストリートビューにて、バリアフリーではない場所を直接、選定したりするという研究例もあります。しかしそれらのほとんどが、ウェブサイト上などから情報を一方的に読み取ることしかできないものです。
本研究では、参加者自らが「主観的な意見」を情報システムに入力することができ、通常の環境画像だけでなく、騒音状況などの音環境まで共有できるシステムを採用していることに独創性があります。
この地域情報整理システムは、参加する全員が「情報を提供する側の人間」となります。これを小学校やNPO法人などで使用してもらえれば、日頃から障害をお持ちの方とワークショップ参加者が互いにコミュニケーションをとる機会が増え、綿密な連携が可能になります。それは参加者の互助の精神を育み、意欲的な参加を促進すると期待できます。元々想定していた障害をお持ちの方の社会参加支援に加え、地域の繋がりが強まるという形で、複合的に社会貢献に寄与することができるのです。