所属
豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 建築環境工学研究室

職名
助教

キーワード
デシカントシステム 稚内層珪質頁岩 除湿換気

助成期間
平成29年4月─平成32年3月

研究室ホームページ
2013年3月

北海道大学大学院工学院 空間性能システム専攻(博士後期課程)修了


同年 4月

北海道大学工学院環境システム工学研究室 博士研究員


2014年4月
株式会社テクノフロンティア 博士研究員

2015年4月
豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 助教


室内の温熱管理を「手動」から「自動制御」へ

近年は夏に熱中症、冬は過乾燥によるインフルエンザをはじめとするウイルスの蔓延などから、室内の温熱環境によるリスクが上昇しています。その原因は、エアコンが単に「冷たい空気」「暖かい空気」を出すだけの機械であるためです。

たとえば夏場、室内の湿度が下がったときは、冷房の設定温度を上げなければ冷えすぎてしまいますが、通常は誰かが「寒いな」と感じるまで、温度が変更されることはありません。また、冬場に暖房の温度設定を高くして室内が乾燥してしまったときは、誰かが加湿器のスイッチをONにしなければ過乾燥の状態が続いてしまいます。

このような温度調整は人が気付いたときに行うのではなく、機械で自動的にコントロールされるべきです。しかし残念なことに、そのような自動制御を安価でしかも汎用的に行うことは困難でした。

また、単に温度と湿度を管理するだけでは、快適性を確保することができません。たとえば夏に温度28℃・湿度50%に保たれた部屋があったとしても、その部屋でずっと読書をしていた人と、外出先から汗水を流しながら帰宅した人では、快適さがまったく違うからです。

そこで本研究では、予測温冷感申告(PMV:Predicted Mean Vote)に基づいて空調システムを自動制御する、PMVコントローラーの研究開発を行っています。

高齢化が進むなか、安全で快適な室内環境の保持がますます重要であると語る鍋島先生

リスクを下げ、消費電量も抑える、空調システムの自動制御

PMVとは、温度・湿度・放射(壁や天井などから人体に伝わる赤外線などの熱)・風速・着衣量・代謝量の6要素から、熱的中立性を数値化したものです。

PMVが快適(中立)域になければ、その空間は快適とは言えません。しかし室内のPMVを正確に把握するには、数十万円もする専用の計測器を複数箇所に設置しなければなりません。

そこで、市販の安価な汎用マイコンとセンサーを用いて、汎用的なPMV計測とエアコンディショナを制御するシステムを試作しました。すでに試作品による実証実験を開始し、実験室内のPMV値に応じたエアコンのON/OFFや、設定温度の変更などが可能になっています。また、嬉しいことにPMV制御によって冬期における電力の過剰投資が抑えられていることも確認できました。

パソコンに接続されている手のひらサイズの機器が、PMV計測機の試作品

さらに、PMVコントローラーで制御された環境下での代謝による体温変化や服装、心電図などの測定実験を開始し、システムにフィードバックすることで、快適性の向上を図っています。将来的にはペットや植物に適した温熱環境を作り出すなど、多方面へ応用できるようになる予定です。