「生体高分子の階層横断的ナノ分光分析法の開拓」

研究中に生じた課題を相談し、新たな視野を得る

研究中、生体分子を対象にするのは初めてだったため、いくつかの課題が発生しました。

とくに頭を悩ませたのが、測定時に発生する熱の問題でした。ナノ分光装置は①ナノスケールに先鋭化した金属プローブ探針に光を照射し、②光を吸収した探針が周囲に強い光を発生させ、③光を浴びた物質の光応答を捉えることで、その物質の情報を得るものですが、光の照射により金属が熱を帯びると、タンパク質にダメージを与えてしまうのです。光を弱くすれば発熱も低減できますが、同時に光応答の感度も下がってしまいます。

この問題の突破口を示してくださったのは、メンタリングの先生でした。「熱に強いタンパク質があるから、それを使ってはどうか」と提案してくださったのです。

私は熱に強いタンパク質が存在することを知らず、測定精度を保ちつつ発熱を抑える方法ばかり考えていたため、まさに目からウロコが落ちる思いでした。

これまで他分野の先生と面談する機会は2度ありましたが、いずれも新鮮な意見やアドバイスをいただきました。また、自分の専門分野の常識が他分野の非常識であること、他分野の常識は自分にとって貴重な知識や技術であることが身にしみました。時間を割いていただいたメンタリングや審査員の先生方には、感謝の言葉もありません。今後も、自分とは異なる学問分野の研究者と積極的に交流し、自らの研究領域を広げていきたいと思っています。

他分野の先生からのアドバイスが、研究を強く後押ししてくれた

「セコム=セキュリティ分野」ではない!

この挑戦的研究助成を見つけたとき、最初は「セコムだから、セキュリティに関連する研究でなければ採択されづらいのではないか」と思いました。

しかし募集要領を読めば、さまざまな研究分野が応募できる、懐の広い助成金制度であることがわかります。継続審査で面接があることに二の足を踏む研究者もいるかもしれませんが、ぜひ「研究の幅を広げるチャンス」と前向きに挑戦してほしいと思います。

何より、3年という長期助成であること、助成金の使途を厳しく制限されず、研究のためにある程度自由に使えることは、他にはない大きな魅力です。今後、この制度が広く知れ渡り、多くの研究者の助けになることを願っています。

あらゆる分野の研究者に、挑戦的研究助成を活用してほしい
インタビュー内容と先生の経歴等は2018年5月現在のものです。