所属
国際基督教大学 教養学部

職名
准教授

キーワード
航空管制 行政機関 情報通信法 ドローン

助成期間

平成30年4月—令和3年3月


研究室ホームページ
2006年3月
慶應義塾大学法科大学院 法務研究科 修了(法務博士)

2009年8月
ドイツ カッセル大学 IT法センター 留学

2012年3月
一橋大学大学院 法学研究科 博士後期課程 修了 博士(法学)

2012年4月
国際基督教大学 教養学部 准教授

2017年6月
理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員研究員

2018年7−9月
ドイツ ザールラント大学 法情報学センター Visiting Fellow


ドローンが持つリスクを踏まえた上で、利活用の法的制度を考案したい

私は昔から法律に興味があったわけではありませんが、次第に「法律が社会の枠組みを作っている」と意識するようになりました。法学部に進学したのち、ロースクールを経て司法試験になんとか合格しましたが、研究の道に入ったのは、クライアントの個別の問題に対応するよりも、社会が抱える問題に法的な側面からアプローチできる人間になりたいという気持ちが強かったからです。その後、航空管制や情報通信法、行政法などを中心に「先端技術の社会実装における国の規制のあり方」をテーマに、研究を進めていました。

ドローンに着目したきっかけは、2015年9月に成立した平成27年改正航空法です。同年4月22日、首相官邸の屋上に微量の放射線物質を積んだドローンが発見されたことから、急遽ドローンの飛行の規制に関する条文が航空法に盛り込まれました。現在、ドローンの飛行には、原則として、国土交通省による許可が必要となっています。

確かに、ドローンはテロ攻撃や盗撮などに用いられるリスクがあります。しかし災害時の調査や、孤立した地域への救援物資の運搬、警備や物流に対する利活用など、人口減少が進む日本において、さまざまな課題解決への貢献が期待されています。ドローンの飛行にともなうリスクの低減には一定の規制が必要ですが、一度厳しすぎる規制を作ってしまうと、その後の利活用の障害になってしまうという問題があります。

そこで、ドローンの利活用にともなうリスクを踏まえた上で、安全・安心な利活用を目的とした法的基盤を整備する必要があると考え、この研究に着手しました。

類似研究はなく、参考となる資料や事例が乏しい中でのスタート

ドローンの利活用を実現する上で解決しなければならない主な課題は、2つあります。「カメラを搭載したドローンによるプライバシーの侵害」と「落下事故による対人・対物リスク」です。これは国民生活の安全・安心と直結する問題です。

しかし研究を開始した当初は、規制の法的根拠を調べようとしても、他国で運用されている法律や制度、その実績に依拠する側面があり、日本の現状を鑑みた検証の資料などは極めて少ない状態でした。また、法学分野で軍事利用ではない、平和的なドローンの利活用に関する類似の研究が殆ど存在していませんでした。つまり、参考にできる事例や論文がほとんどなかったのです。

そこで本研究の目的を、以下の3点にまとめました。①進化し続けるドローンの具体的な利活用に関するリスクを包括的に検討し、対策や戦略を策定する。②ドローンの利活用による安全・安心な社会構築を目的とした法整備に関する課題の抽出と、多方面からの検討・研究および解決策の提示。③先端技術を取り入れた未来社会におけるドローンの利活用のあり方の国際比較法による考察を行う。

特に商業利用を実現するには、ドローン専用の空路である「ドローンハイウェイ」の検討と実証実験は不可欠です。もともと、国家戦略特区制度などの活用が目指されていましたが、その後、平成30年にドローンに関する実証実験を各地において可能とする規制のサンドボックス制度を取り入れた生産性向上特別措置法(平成30年法律第25号)が制定、施行されたこともあり、より具体的に、ドローンハイウェイの実現可能性と法的障壁に関する検討を行うことが可能になりました。その他、平成31年度においてもドローンの飛行の安全性に関する航空法の改正が進められており、ドローンの利活用に関する法律の整備も進んでいるといえます。

「研究を進め、ドローンハイウェイの法的問題に関する論文を執筆することができました」と語る寺田先生