所属
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) オープンイノベーション推進本部 ソーシャルイノベーションユニット 耐災害ICT研究センター応用領域研究室

職名
研究員

キーワード
無線通信 端末間連携 エネルギー考慮型システム

助成期間
平成29年4月─平成32年3月

研究室ホームページ
2016年3月

東北大学大学院工学研究科通信工学専攻博士課程後期 修了


2016年4月

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)耐災害ICT研究センター 研究員



「ゲームのできる携帯電話」に衝撃を受けた

今や、世界中の人々の必携ツールともいえる、スマートフォン。

スマートフォンが登場したのは2000年台後半頃ですが、それまでは携帯電話、俗にいう「ガラケー」が、私たちの主要な通信インフラでした。私が小学生のころ、父がNTTドコモのサービス「iモード」を搭載した携帯電話を購入してきました。従来のガラケーは、通話機能しかありませんでした。

しかし、このiモードの登場により、携帯電話からインターネットの閲覧や、メールの送受信が可能になったのです。携帯電話分野に革命を巻き起こした出来事でした。「こんなに小さな機械で、世界中と繋がることができるのか」と驚嘆し、これが無線通信分野の研究に興味を持ったきっかけになりました。

ラジオ少年ならぬケータイ少年だったと語る天間先生ラジオ少年ならぬケータイ少年だったと語る天間先生

複数台の端末が連携して、仮想無線リンクを形成する

ガラケーがすたれ、スマートフォンが普及するとともに、より速い通信回線である「LTE」が普及しました。また、IoTによるさらなるネット社会の加速により、私たちの生活はより快適になりつつあります。

しかし、これらはあくまでインターネットに繋がることが前提です。大規模災害で携帯電話の基地局が破壊されてしまえば、無線通信は不可能となってしまいます。特に東日本大震災では基地局に異常が生じ、電話が繋がらず、インターネットにも接続できなくなるケースが多数報告されました。現在の通信インフラは、私たちが想像しているより、はるかに脆弱な仕組みの上に成り立っているのです。

そこで本研究では、複数台のスマートフォンで「仮想無線リンク」を作り、そのうち一台だけが親端末として基地局と通信するモデルを提案しました。

スマートフォンが通信に使う消費電力は、基地局との距離と比例します。最も電力を使うのがLTE回線で、高速なネット接続を実現しますが、基地局との距離が遠いため電池の消耗が大きくなります。Wi-Fiであれば、届く範囲はおよそ数十mほどですが、LTEよりも消費電力が小さくなります。

災害時に一斉にLTEに接続しようとすると、全体として消費電力が大きくなります。また、基地局に異常をきたしている通信網では、通信自体ができなくなります。そこで、基地局と通信が可能で、かつ最も通信効率が高い親端末を自動的に選定する仕組みを作ることができれば、LTEで基地局に接続されるのは親端末一台だけですむことになります。すると親端末はLTE回線ですが、他の子端末はWi-Fiで通信しているだけで、基地局と無駄な通信が発生しません。基地局に異常をきたしている通信網を利用する端末も、子端末となることで通信が可能になります。自分ひとりでLTEを使用するより、グループのうち一台だけがLTEで通信し、あと数台はお互いにWi-Fiでつながっているほうが、全体としてはるかに効率的にインターネットに接続することができるようになるのです。

電波環境のよい一台がプロキシ端末(親端末)となり、親端末がアクセスポイントになることで、他端末に省電力でのアクセスを提供する電波環境のよい一台がプロキシ端末(親端末)となり、親端末がアクセスポイントになることで、
他端末に省電力でのアクセスを提供する