「電磁波照射攻撃によるセキュリティ低下メカニズム解明と対策技術の開発」

電磁波セキュリティという新分野の誕生に寄与した研究成果

初年度は、IC(電子回路)に意図的な電磁妨害を行った際の電気的変動をモニタリングできる環境の構築や、故障を引き起こしやすい妨害周波数の抽出などを行いました。当初は人が近づいただけで電磁環境が変化し、意図的な電磁妨害を行った際にも機器に故障が生じたり、生じなかったりと安定した結果が得られず、その原因の解明や再現性あるセットアップを作ることに苦労しましたが、予定通り成し遂げることができました。

その成果を受けて、今年度は妨害を受けやすいICの配線パターンや素子配置の特定、機器設計時における電磁妨害耐性評価手法の開発に取り組み、その成果を環境電磁工学分野の国際会議(IEEE Symposium on Electromagnetic Compatibility)で発表しました。

また、IEEE EMC Society内に設置されている「電磁情報漏えいに関する技術小委員会」(委員長は林)においても、弱い電磁波が情報通信機器のセキュリティに与える影響に関する議論が始まりました。情報セキュリティ分野以外の分野においても新たなセキュリティに関する議論が展開されようとしていることに、研究者として大きな喜びを感じています。

離れたところからケーブルに向かって弱い電磁波を照射すると、誰も触っていないコンピュータに命令が送信され実行される離れたところからケーブルに向かって弱い電磁波を照射すると、誰も触っていないコンピュータに命令が送信され実行される

不連続なジャンプがなければ研究は広がらない

多くの研究助成制度は、それまでの研究実績が採用の可否に大きく影響します。しかしこの挑戦的研究助成は、萌芽的な内容であっても、研究者の背中を押して前に進ませてくれます。階段を一段ずつ上るように着実に進めていくことも大事ですが、不連続なジャンプがなければ研究は広がらないことを、今回実感しました。知り合いの研究者にこの助成制度を紹介したところ、今年採用されたと連絡があり、とても嬉しかったです。

私が研究を続けるのは、まだ誰も見たことがない現象や結果を、最初に目にしたいからです。今後も自分の専門分野を少しずつ広げ、新たな知見を取り入れながら、世界にも通じる研究を行っていきたいと思います。

世界に通じる研究結果を出し、トップカンファレンスを目指したい世界に通じる研究結果を出し、トップカンファレンスを目指したい

インタビュー内容と先生の経歴等は2018年7月現在のものです。