「最先端ブラックボックス最適化に基づくパラメータフリー深層学習技術の開発と応用」

世界の類似研究と比べて優位性を保持

しかし、ディープラーニングを利用するためには、エンジニアが「ハイパーパラメータ」というディープラーニングの構成を決める変数を事前に設定する必要があり、労務的・時間的に莫大なコストを要するのが現状です。世界中の誰もが適切なハイパーパラメータを設定できるわけではないからです。

そこで私は、ディープラーニングの学習中にハイパーパラメータも同時に機械が自動決定できるような技術を開発し、パラメータフリーなディープラーニング技術を実現しようとしています。学習中にハイパーパラメータを「動的最適化」する方式は、世界的にも例がなく、他の類似研究と比べて優位性を保持しています。また、このテーマは、理論的な面を中心に筑波大学の秋本先生に協力をいただき、共同研究のかたちで取り組んでいます。

しかし、ここで問題が浮上しました。〝先立つもの〟がなければ、研究を継続することも、国際会議で成果を発表することもできません。大学からの研究費だけですべてをまかなうことはひじょうに困難であり、前例がなく成功する保証のない研究ゆえか、他の研究助成からは不採択通知を受け、研究を円滑に進めることができていませんでした。

研究者として成長させてもらえる助成

面接の選考員が人工知能分野の権威ある先生ばかりで「驚きと興奮を隠せなかった」と語る白川先生

そんなとき、大学から送られてきたメールでセコム科学技術振興財団の挑戦的研究助成を知り、応募しました。書類選考を通過し面接に進むと、面接の選考員の方々が人工知能分野で権威ある方々ばかりで驚きました。面接では様々な分野の先生がいるだろうと一般向けの発表資料を持って行ったのですが、なにせ専門家の方々ですので、想像以上に的確かつ手厳しいご指摘を多数いただきました。さらに、「こうすればもっと良くなるのではないか」とアドバイスもいただき、たいへん助かりました。

また、研究がスタートして半年後のメンタリングでは、研究内容についてだけでなく、経験豊富な先生から国際会議などにおける論文査読、受理のポイントなど、実践的な方法論を丁寧に教えていただくことができました。2年目への継続面接では、選考員の先生から、「方法は従来と異なっているが、優位性の説明が不十分ではないか」と、本質をついたご指摘をいただき、まだ私が明瞭に説明しきれていなかった部分が明らかになりました。

本助成を受けたことで、研究費の心配をする必要がなくなり、研究に集中できる環境を整備できたことは、非常にありがたいです。

また、継続審査やメンタリングなど定期的に研究を報告する機会が設けられているのも良い点だと思いました。こういった機会をターゲットに、共同研究者と綿密に打ち合わせをしたり、研究計画を立てたりすることで、より効率的に研究を進めることができました。

理想の研究者像は

「ディープラーニングのハイパーパラメータ自動設定といえば白川」を目指して

本研究を機に「ディープラーニングのハイパーパラメータ自動設定といえば白川」と呼んでもらえるような研究者になることが目標です。少々研究に傾倒してしまっているので、現在0歳と3歳の子供と遊ぶなど、家庭生活とのワークライフバランスを実現できるよう心がけています。

インタビュー内容と先生の経歴等は2018年4月現在のものです。