「超スマート社会におけるプライバシー保護の法政策研究」

理論的思考から憲法学へ

2年目の研究継続審査では、研究がより進展するようなアドバイスを受けることができた

以前からセコム科学技術振興財団のホームページを拝見していましたが、「名声と実績を兼ね備えた、大学教授お歴々に対する大型助成財団」というイメージで、私のような若手研究者とは縁がないものと思い込んでいました。ところが、平成29年度から開始された「挑戦的助成研究」では、39歳以下の若手研究者が対象になることを知り、すぐに応募させていただきました。

二次選考の面接時のことは、今もよく覚えています。法整備という文系研究まっしぐらである私が、理系の研究者である選考委員の先生方から、多角的な質問を受ける経験は非常に新鮮で、貴重なものでした。

また、これまでの国内助成とは違い、複数年に渡ってご支援いただけるので、国内外の研究者と協力することが必須である本研究との相性は最高でした。採択していただいたおかげで、本研究でとくにコストを要する旅費や国際会議登録費、共同研究者の人件費を確保することができ、海外の研究者を含む研究チームをつくって円滑に研究を進めることができました。もし応募に落ちたとしても、もう一度応募していたと思います。私にとって本助成は、それほど魅力的なものでした。

2年目の研究継続審査でも、研究内容を深く理解してくださった先生方から、研究の優先順位など「研究がよりよい方向に進む」ための極めて的確かつ生産的なご指摘をいただき、研究をさらに一歩前進させることができました。

GDPRをふまえた最先端の政策提言を目指して

今後、プライバシー保護に関する議論の中心となるのは、ヨーロッパで制定されたGDPR(General Data Protection Regulation)です。個人情報を取り扱う際に要求される基準であり、この基準はEU圏のみならず、世界中に適用されます。そのため、現在ビッグデータを扱う世界中の企業がGDPRに注目しています。日本もこれを踏まえ、どのような法律を整備するのか、ついに決めるべき時が来たのです。

本研究はアメリカ・EUにおける個人情報データ利活用の事例を収集、分析し、日本の法制度との比較分析を行い、2019年には世界各国から研究者を招聘して、具体的な政策提言をすることを目的としています。GDPRに精通した協力研究者を含んだ提言は本邦初のため、今後の国内プライバシーに関する法整備を、国際基準に沿った方向へと導くことが期待できるでしょう。

法律による確かな線引きをすることは、個人のプライバシーを保護するばかりではなく、情報技術の進展を促し、その恩恵に預かる我々と、ビッグデータや人工知能を駆使する企業間の「WIN-WINの関係」を築きます。それが安全安心な個人情報の利活用に繋がり、超スマート社会を実現するものと考えています。

若手研究者の「登竜門」

最先端の法律に関する研究を助成してくれるのは、セコム科学技術振興財団だけ

以前の私と同じように、セコム科学技術振興財団の研究助成は、理系研究に対して助成するイメージがあり、若手研究者とは縁のないものと思う方は多いと思います。しかし挑戦的研究助成では「可能性があり、革新的な研究」を見捨てることなく、若手研究者の育成を念頭において助成を検討していただけます。今回の私のように、最先端かつ動態的な法律に関する研究を認めてくださる助成制度は、国内ではセコム科学技術振興財団をおいて他にありません。

挑戦的研究助成は、若手研究者が飛躍するための「登竜門」です。理系や海外の研究者の方々と共に研究できる機会を得ることは、文系研究者にとって有意義な経験になるはずです。良いアイディアがあれば、積極的に応募されることをお勧めします。

インタビュー内容と先生の経歴等は2018年3月現在のものです。