チームワーク科学分野
チームワークに関する革新的な研究アプローチの確立と分野横断的研究領域の創出

堀井 秀之 先生

領域代表者 
i.school エグゼクティブ・ディレクター
(一社)日本社会イノベーションセンター(JSIC)代表理事
東京大学 名誉教授

チームワーク イノベーション

研究室ページ

1983年8月ノースウェスタン大学大学院博士課程修了。Ph.D.(土木工学)。同年9月同大学ポストドクトラルフェロー。1986年4月東京大学土木工学科助教授。1996年4月東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻(現:社会基盤学専攻)教授。2001年7月~2005年2月JST社会技術研究開発センター研究統括。2005年5月同センター安全安心研究ユニット統括。2009年4月東京大学知の構造化センター長。同年よりイノベーション教育プログラムi.schoolをエグゼクティブ・ディレクターとして運営。2011年~2012年東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)社会システム等検証チーム長。2016年一般社団法人日本社会イノベーションセンター(Japan Social Innovation Center, JSIC)を設立。2018年に東京大学工学系研究科名誉教授となり現在に至る。

変化し続ける社会に貢献する「新しい研究分野」への支援が必要

将来性のある、革新的な分野に取り組む研究者にとってプラスになる支援のあり方を考えた

従来の研究助成は、すでに一定の成果が上がっている特定の分野を対象とする「一点集中型」が多く、また多くの業績を上げたベテランの研究者が助成対象となる傾向にありました。しかし、急速に変化・複雑化する社会において安全安心を実現するためには、新たに顕在化した社会的ニーズに応えうる研究分野を発掘し、分野横断的に開拓していく必要があります。

そこで、将来社会に大きく貢献する、新規性の高い分野の開拓に取り組む諸分野の研究者や、これから自分の研究領域を確立する、あるいは新たな研究領域を模索する段階にある研究者の育成と支援を目指すべきだと考えました。

i.schoolでの活動からチームワークに着目

私は製品やサービス、ビジネスモデル、社会システムなどについて新しいアイデアを生み出し、主体的に課題解決ができる人材の育成を目指して、2009年からi.schoolのエグゼクティブ・ディレクターを務めています。この組織では、学生・社会人・法人を対象に、イノベーション教育プログラムとしてワークショップを開催していますが、チームによって成果に大きな差が生じることに気づきました。なぜ結果に差が生じるのか、すべてのチームで良好な結果が出せるようにするためには何が必要なのか、様々なデータを取得して探る中で、チームワークに注目するようになったのです。

チームワークを科学的・分断横断的に研究

チーム活動は、あらゆる人間活動の基本です。企業・社会・学校など、組織を効率的に運営するためには良好なチームワークの構築が必須となります。

ところが、コロナ禍に伴いリモートワークをはじめとするオンライン化が急速に進行したことで、対面での活動に比べてチームワークやリーダーシップがうまく機能しない事例が目立つようになりました。オンライン上でも組織をチームとして機能させ、生産性の維持・向上を目指すためには、チームワークに関する科学的な知見の蓄積が必須なのです。

チームワーク科学の学問体系としてのイメージは、スポーツ科学に近い。エビデンスやファクトに基づいてチームワークについて明らかにし、ビジネスや教育の現場に生かせるようにしたい

しかし、チームワークを真正面から明らかにしようと試みる学術的研究は、これまで存在しませんでした。また、個別の学問領域で類似のテーマが扱われることはありましたが、チームワークは分野横断的なテーマであり、様々な分野の研究者が協働して研究に取り組むべきと考えたのです。

そこで本領域では、経営学や工学、行政学など複数の学問分野の研究者にご参画いただき、チームワークに対する分野横断的な研究を目指しました。既存の研究は実験結果に基づくものが多いのですが、実際に行われている活動の中から真理を見つけ、それを学問として昇華することで、ビジネスや教育の現場にフィードバックできるようにしたいと考えています。